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オンラインネーム:バンブー 主にCoD4、デモンズソウルなど他人に寄生できるゲームを配信する。 オンラインネームから、『竹さん』、『竹ちゃん』などの愛称で視聴者から呼ばれ、親しみやすいプレイヤーだが、 PS3IDのスペルは竹とは異なっている(実は頭は悪いのかもしれない…)。 スペランカーはかなり上手なプレイを見せるが、いかんせんゲーム自体が過疎っている。 彼がCoD4を配信すると、なぜかレスが少なくなる現象が多々ある(みんな凸しているからだよね?ね?)。 最近(2009/11/02)、配信環境の改善の為にルーターを買い換えたが、それが改悪となり、 何もしなくても配信が切断されるという現象が起こった。 現在(2009/11/08)では、配信環境も改善された。 配信中の出来事 2009/11/08 23 05 好意で鏡を出してくださった方を蹴りだすという暴挙を行う 最近の主な配信タイトル CoD4 MW2 MAG β CoD4 ぽっちゃりプリンセス DEMO みんなのスペランカー デモンズソウル
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「確かに、俺は死神だ・・・だが、それは罪を重ねた悪人に対しての話だがな。一般的に人々は俺のことをこう呼ぶ・・・『仮面ライダースカル』。」 そう言って、変身を解除する仮面ライダースカル。 風に乗って剥がれ落ちる装甲の中からは、白い背広を着たひとりの男が立っていた。 「あんたは・・・いや、あなたは!」 「照井さん、あの男を知ってるんですか?!」 「ああ。所長の父親で・・・確か、名前は・・・。」 「鳴海 壮吉だ。」 「・・・いや、待て!左の話によれば、あなたは死んだはずでは・・・?」 「・・・え?」 「そう、確かに俺は死んだ。だから、この世界にいるんだよ。」 「・・・じゃあ・・・俺たちのいる世界は・・・。」 「そう、お前さんの予想どおり『死の世界』だ。」 鳴海 壮吉の言葉を聞き、愕然とする照井と上条。 だが、一方の鳴海は涼しそうな顔をしていた。 「そう早とちりするなよ、若人。」 「・・・え?」 「ここは『死の世界』・・・と言っても、まだ地獄の1丁目。つまり、生と死の境目みたいなところだ。」 「・・・じゃあ、まだ生き返れる可能性もあるんですね?!」 嬉しそうな顔をする上条。 「ああ・・・だが。」 「だが?」 「・・・さっきも言ったはずだ。俺は罪を重ねた者への『死神』だとな。」 「罪・・・?」 「これを見な。」 そう言って、指でパチンという大きな音を鳴らす鳴海。 すると、漆黒の空にひとつのヴィジョンが映し出された。 照井と上条の目に飛び込む光景。 それは、傷だらけになりながらもトライアル・ドーパントと戦う御坂 「あれは・・・井坂!それに御坂!!」 「ビリビリの奴、ひとりで戦ってるのか?!」 「これが・・・お前たちの『罪』だ。」 冷淡に言う鳴海。 「俺たちの・・・『罪』?」 「ああ、彼女はどうしてひとりで戦っていると思う?」 「ひとり・・・?待ってくれ!ビリビリには風紀委員の仲間がいるはずだ!それなのにどうしてひとりなんだ?!」 「彼女が望んだんだ・・・ひとりでの戦いをな。」 「・・・どういうことだ?」 「あの子は今、復讐の心のみであのドーパントと戦っている。悪と戦う仮面ライダーという存在、そして自らが愛する男という存在、 これを2つ失った悲しみや怒りによって生み出された心のみでな・・・。」 再び目に入る、トライアル・ドーパントと御坂との戦いが映し出されたヴィジョン。 そこには、トライアル・ドーパントの高速移動による四方八方から繰り出されるキックによってサンドバック状態と化しつつも、 気力のみで立ち上がりファイティングポーズをとろうとする御坂の姿があった。 「分かるか?あの子は刺し違えてでもあのドーパントを倒すつもりだ・・・いや、自殺しに行ってるが近いかもしれないな。 もう、自分の愛する者を奪われないために・・・そして、自分が二度と悲しまないために。」 「・・・ビリビリ!止めるんだ!!」 思わず叫ぶ上条。 「・・・そしてもうひとつ。」 そう言うと、鳴海は再び指を鳴らす。 現われるもうひとつのヴィジョン。 そこには、リボルギャリーのドックにてフィリップとともに何かを作っている禁書の姿であった。 「禁書!」 ヴィジョンに映った禁書の顔を見る照井。 その顔は、寝る間も惜しんで作業に徹していたのか、生気の薄れた顔となっていた。 だが、そこには何かを信じて待っているかのような希望も感じられるのであった。 「あの子はフィリップとともに、あのドーパントを倒すための武器を作っているそうだ。細かいところに関しては俺も不明だがな。」 「禁書・・・。」 三度、指を鳴らす鳴海。 すると、その上空のふたつのヴィジョンが消え、彼らの周囲は再び闇の世界へと戻った。 「・・・それじゃあ、ここで最後の選択だ。返答によってはお前たちを死の世界へ連れていくから覚悟しな。」 そう言って、鳴海はガイアメモリを構えた。 SKULL!! 「変身。」 鳴海の腰に巻かれたロストドライバーに挿入されるスカルのメモリ。 そして、紫の光が包み込み、再び彼を仮面ライダースカルの姿へと変えるのであった。 「さあ・・・お前の罪を数えろ。」 照井と上条を指差すスカル。 これに対し、ふたりはゆっくりと答えた。 「俺の罪・・・それは、悪の手から人々の心を守れなかっただけでなく、さらにはその命までの危険にさらそうとした罪!」 「2つ目・・・帰ってくること、そして悪を倒すことを願っている人がいるにもかかわらず、こんな闇の世界に留まっている罪!!」 「そして・・・最後の罪・・・。」 「それは・・・。」 「「正義が悪に負けた罪!!!」」 漆黒の世界に照井と上条の大きな声が響き渡った。 「・・・。」 無言でスカルマグナムを取り出し、スカルのメモリを挿入するスカル。 SKULL!MAXIMUM DRIVE!! 「何をするつもりだ?!」 「こうするのさ・・・。」 そう言って、照井たちに向けてギルティシュートを放つスカル。 だが、その弾丸はふたりの間を通り過ぎ、そして漆黒の壁に衝突した。 砕け散る壁、そしてそこからは神々しいほどの光があふれていた。 「これは・・・。」 「まあ、点数としては70点だが・・・ある程度自分の罪が分かってるから良しとしよう。」 「鳴海さん・・・いや、仮面ライダースカル!」 「その光の道を抜ければ現世に戻れる。そして・・・自分たちの言った罪を十分に償ってこい! またここに戻ってきたら承知しないからな!!」 「ありがとうございます!!」 そう言って、駆けだす上条。 続いて照井も駆けだそうとしたその時だった。 「照井 竜・・・と言ったな?」 「え・・・あ・・・はい。」 「・・・いや、なんでもねぇ。」 「・・・?」 「照井さん!早く行きましょう!!」 「あ・・・ああ!!」 そう言って、光の道を駆けていく照井と上条。 そして、崩れた壁は再生し、スカルの周囲は再び漆黒の闇と化した。 「照井 竜・・・か。」 つぶやくスカル・・・いや、鳴海 壮吉。 「まるで若い頃の俺を見てるようだ。だからこそ、亜希子が惚れたのかもしれないな・・・。 頼んだぜ、仮面ライダーアクセル!上条 当麻!!学園都市と風都の平和を、そして家族としての未来を!!!」 「まだ戦おうというのですか?虫けらの存在で・・・。」 一方、トライアル・ドーパントと御坂の戦いはまだ続いていた。 トライアル・ドーパントの攻撃を受け続け、立ち上がるのもままならない御坂。 だが、彼女の闘志は自身を無理やりにでも立たせるのであった。 「いやはや・・・医学、生命、ガイアメモリとこれまで色々なことを研究し自分なりに理解してきた私ですが、 未だに君たち虫けらの考えや行動というのが理解出来ませんねぇ・・・。」 そんな時、御坂がポツリという。 「・・・とう・・・ま・・・ライ・・・ダー・・・。」 「・・・ん?」 「もう・・・失い・・・たくない・・・。」 涙をこぼしながらつぶやく御坂。 だが、その言葉は意識を失いかけながらも立ち上がろうとする心の叫びだったのかもしれない。 「そうですか・・・では、失うことのないようあなたも地獄に送ってあげましょう。仮面ライダーが遺した武器によってね!」 そう言って、アクセルから奪ったエンジンブレードを振りかざし、御坂に襲いかかるトライアル・ドーパント。 しかし、限界まで来ていた御坂に動く力など無く、エンジンブレードを前に立ち尽くすのみであった。 「これで・・・最後です!!」 御坂に振り下ろされたエンジンブレード。 だが、その刃が彼女を襲う直前、何者かが立ちふさがり、刃の進行を止めた。 「何?!・・・!!」 「残念だったな、井坂。」 トライアル・ドーパントの前に立ち、真剣白羽取りをする赤き装甲の男・・・それは仮面ライダーアクセル=照井 竜であった。 「貴様・・・生きていたのか?!」 「『貴様』?残念ながら俺も生きてるぜ!!」 トライアル・ドーパントのもとへ現われるもうひとりの影。 その影は右手でトライアル・ドーパントの腕を握ると、何かを送り込むかのように右手に力を込めるのであった。 「な・・・う・・・腕の力が・・・?!」 「だから言っただろ?<幻想殺し>をなめるな・・・ってね。」 その声の主は上条 当麻であった。 <幻想殺し>によるエネルギー吸収によって腕の力を失うトライアル・ドーパント。 そして、ついにはエンジンブレードを支えることが出来ず、そのまま落とすのであった。 「今だ!」 即座に反応に、地面に落ちたエンジンブレードを拾い上げるアクセル。 そしてトライアル・ドーパントに連続して切りかかり、相手との間合いを取るのであった。 倒れるトライアル・ドーパント。 と同時に御坂は目を覚まし、現在の状況に気づくのであった。 「・・・あれ・・・私・・・?!」 「ビリビリ、大丈夫か?!」 駆け寄る上条。 「上条・・・。」 「ビリビリ・・・心配かけ・・・?!」 「あんたねぇ・・・この・・・大馬鹿ヤロォおおおおお!!」 御坂のもうひとつの能力である<電撃使い(エレクトロマスター)>が発動、膨大な電気エネルギーが上条の体に流れ、 彼の体はまるでギャグ漫画のような真っ黒焦げのアフロヘアーとなってしまうのだった。 「ちょ・・・待てよ!助けに来て、この仕打ちは無いだろう!!もう一回、地獄の一丁目に行ったら問答無用で地獄行きだってぇのに!!!」 「何をワケの分からないこと言ってるのよ!こっちはどんだけ・・・どんだけ・・・心配したと思ってるのよぉ!!」 大声をあげる御坂。 と同時に、心情が高ぶり過ぎたためか、彼女は子供のように泣き出してしまうのであった。 「・・・ったく。上条、何やってるんだよ。」 「え・・・俺のせいですか?!」 「何言ってるのよ!ぜぇ~んぶ、アンタのせいなんだから!!だから・・・明日はちゃんと映画に連れていくなり食事をおごるなり・・・ とにかく私のしもべとして働きなさいよ!!!」 「せっかく現世に帰ってきたのに・・・不幸だ・・・。」 「何が不幸だ!それがレディに対して言うセリフか!!」 「やれやれ・・・!おい、上条の処遇についてはあいつを倒してから話したほうが良さそうだぞ。」 そう言って、エンジンブレードを構えるアクセル。 その目線の先には、先ほどの攻撃でダメージを受けながらも立ち上がるトライアル・ドーパントの姿があった。 「おのれ・・・貴様ら虫けらどもにT2ガイアメモリの力が負けるはずがない!」 怒りの声をあげるトライアル・ドーパント。 これに対し上条が言う。 「あんたは重大な勘違いに気づいてないようだな。」 「勘違い・・・だと?」 「確かに俺らはあんたから見れば虫けらだ。力も能力もあんたに劣っている。だが・・・それは見方のひとつでしかない。」 「見方・・・?」 「そう、あんたは子供の頃に習わなかったか?物事というものはひとつの目線で捕えるんじゃなく、色々な目線で見つめ、 総合的に考えていく・・・ってね。あんたは『力』や『能力』といった点からは優秀だ。だが・・・それ以外は0点だ。 人の心を理解出来ず、命という存在を軽視するあんたはな!」 「Lv.0の分際でベラベラと・・・言いたいことはそれだけか?!」 「俺もあるぜ。」 アクセルが上条の隣りに立つ。 そして、トライアル・ドーパントを指差して言い放った。 「お前の罪を・・・数えろ。」 「罪だと?フン、私に罪など無い! 君の家族の命を奪ったのも、学園都市の者を襲撃したのも私の最強への道の実験台でしかないのだからな!!」 「・・・0点。」 「何だと?!」 「もう一度言ってやる。井坂、お前の全てが0点・・・いや、それ以下だ。」 「貴様ら、虫けらの分際で・・・私にそんな減らず口が叩けないようにしてやる!!」 怒りが頂点に達するトライアル・ドーパント。 この言葉に上条とアクセルが構える。 「その幻想・・・。」 「俺たちが・・・。」 「「振り切るぜ!!」」 怒りが頂点に達し、マキシマムドライブ状態となるトライアル・ドーパント。 これに対し、上条が後ろの御坂に向かって叫ぶ。 「ビリビリ!俺たちに向かって<超電磁砲>を放て!!それも生半可なもんじゃねぇ・・・お前の全身全霊を込めた<超・超電磁砲>をな!!!」 「はぁ?!何、そのネーミング!しかも、なんで?!」 「俺たちに質問するなっ!!」 叫ぶアクセル。 「だぁあああああ!!こうなったら、ヤケクソでその・・・えぇっと・・・ <超・ウルトラ・スーパー・ミラクル・ハイパー・超電磁砲>とやらをお見舞いしてやるから覚悟しなさいよ!!!」 「おい、ビリビリ!名前が盛大に間違・・・ぅおっ?!」 ツッコミを入れようと上条が後ろを見ると、そこには今までにないほどの電気エネルギーを解放していた御坂の姿があった。 彼女の両腕に集められる多量の電気エネルギー。 そして、それらは手のひらという小さな空間に集められることによって凝縮され、プラズマエネルギーと化する。 だが、今までの<超電磁砲>に使っていたような電気エネルギーと違い、 莫大な熱量を持ったプラズマエネルギーの制御に御坂は苦戦を強いられていた。 「くっ・・・行くわよ!!」 叫ぶ御坂。 「OK!・・・照井さん、行きましょう!!」 「ああ!!」 返事をするアクセル。 そして、自身のアクセルドライバーに挿されたアクセル・メモリを抜くと、エンジン・メモリへと差し替えるのであった。 ENGINE!MAXIMUM DRIVE!! ガイアウィスパーが流れるや否や、バイクモードへと変形するアクセル。 一方、上条は変形したアクセルにまたがり、再度御坂に向かって叫んだ。 「ビリビリ!今だ!!」 「どぉりやぁあああああ!!」 御坂の手から解放されるプラズマエネルギー。 そのエネルギーの塊は流星の尾のような光を描きながら、一直線にアクセルたちに向かっていった。 「上条、行くぞ!!」 アクセルドライバーのアクセルを勢いよく引き、飛び上がるアクセル。 その体は宙に浮き、そしてタイミングを合わせたようにプラズマエネルギーと合体、 光り輝くバイクとなってトライアル・ドーパントに向かっていくのだった。 「うぉおおおおお!!」 高速移動で一直線に襲いかかるトライアル・ドーパント。 同じく、敵に向かって一直線に突撃していくアクセル。 磁石のように引きあうふたつはやがて激突する・・・かと思われた。 だが・・・。 「・・・残念ですが、ここは勝ちに行かせてもらいますよ!!」 そう言って、今まで進んできた直線コースから突如として横に逸れるトライアル・ドーパント。 一方のアクセルは敵の突然の行動に対応することが出来ず、そのままトライアル・ドーパントの横を通り過ぎてしまうのであった。 「私を『0点』呼ばわりしたワリには、こんな猪突猛進な攻撃とは・・・やはり君たちは・・・。」 「いや、あんたは0点だよ。この攻撃をただの体当たりとしか思っていない限りはな!」 叫ぶ上条。 すると、まるでサーフボードの上に立つかのようにバランスをとって立ち上がるのであった。 「・・・何のつもりです?」 「お前を倒すつもりだぁ!!」 右手の<幻想殺し>に力を込める上条。 そして極限まで力を溜めると、その手をまるでテニスのラケットのごとく勢いよく振るのであった。 右手から放たれる<幻想殺し>のエネルギー。 それは手の動きをなぞるかのようにカーブしたエネルギー体となってアクセルの前に現われ、 そしてアクセルの軌道を再度トライアル・ドーパントに向けるのであった。 「何っ?!ならば!!」 再び一直線に向かってくるアクセルに対し、高速移動で避けるトライアル・ドーパント。 だが、今度は<幻想殺し>の力を使うことなくアクセルはUターン、三度トライアル・ドーパントへの攻撃を仕掛けるのであった。 「これはいったい?!」 「<超電磁砲>・・・それはビリビリらしい『一直線にしか進まない』攻撃技だ。だから、あんたはこの攻撃も一直線にしか来ないと考えたんだろう? そこで、俺と照井さんはその考えを逆手に取った作戦を採ることにしたんだ。<幻想殺し>で<超電磁砲>の特性である『一直線にしか進まない』性質を消し、 お前の高速移動に対抗した攻撃を・・・そして、固定概念に縛られたお前の動揺を誘うという作戦をな!」 上条の言うとおり動揺していたため、ついにアクセルの体当たりを受けるトライアル・ドーパント。 一方のアクセルは再度Uターンを行い、体当たりを行なう。 繰り返される、アクセルの攻撃。 その移動によって残された光の軌道は∞(無限)の文字を描き、トライアル・ドーパントにダメージを与えていく。 そして何度目かの攻撃の時、光の軌道を残したまま、アクセルがバイクフォームを解除して現われる。 ACCEL!MAXIMUM DRIVE!! アクセルドライバーに刺さっていたエンジン・メモリを抜き、再度アクセル・メモリへと差し替えるアクセル。 そして、アクセル・メモリのマキシマムドライブを発動させると、エンジンブレードを構えてトライアル・ドーパントを睨むのであった。 アクセルの脳裏に浮かぶ光景。 それは『笑顔』であった。 父、母、妹、鳴海 亜希子、上条、御坂、白井、そして・・・禁書。 全ての笑顔を守るため・・・仮面ライダーとして戦い続けるため、アクセルは自らの闘志を燃やした! 「・・・ぅおぉおおおおお!!」 闘志同様、アクセル・メモリの力によって燃え上がる体。 その炎はエンジンブレードへと集約され、エンジンブレードを炎の刀へと作り替えた。 「井坂!これで最後だ!!」 叫びとともに炎の刀を振り下ろすアクセル。 その一撃はトライアル・ドーパントを、そして相手の動きを拘束していた∞のプラズマエネルギーをも真っ二つにするのであった。 無限をも打ち砕く一閃・・・新技インフィニティスラッシャー完成の瞬間であった。 「そんな・・・馬鹿な・・・。」 「絶望が・・・お前のゴールだ。」 大爆発を起こすトライアル・ドーパント。 「やった!!」 「照井さん!ついに・・・倒したんですね!!」 アクセルのもとへ上条と御坂が駆けつける。 一方のアクセルもこの爆発を見て戦いが終わったのだと思い、変身を解除しようとベルトに手をかけようとしたその時だった。 突然、3人の体に走る電気のような恐怖の感情。 予測不能の事態にアクセルは再び構え、また上条たちも急いでアクセルのもとに現われる。 「これはいったい・・・?」 「・・・!」 「そんな!!」 爆発によって出来た火柱を見る3人。 その目線の先には、倒したはずの井坂の姿が、そして彼の手にはメモリブレイクしたはずのT2トライアル・メモリがあった。 「馬鹿な・・・メモリブレイクしたはずなのに・・・。」 「残念ですが・・・T2ガイアメモリは普通のとは・・・違いましてね・・・君たちのような虫けらには・・・ ブレイク出来ない構造に・・・なっているのですよ・・・。」 息も絶え絶えになりながら語る井坂。 「メモリブレイク出来ない・・・だと?」 「そう・・・だから・・・。」 TRIAL! 残された力で再度耳にメモリを挿入する井坂。 その姿はトライアル・ドーパントに・・・しかも、先ほどのアクセルたちの攻撃など無かったかのような無傷の姿となっていた。 「私を倒すことは出来ないのです。ましてや、虫けらごときが神に等しき力を持った私を倒そうなど不可能にも程がある!」 井坂が言う。 その声も先ほどのような満身創痍の声ではなく、ハツラツとした声であった。 「さあ、どうしますか?このまま素直に私に倒されるか・・・それとも、無駄に抵抗して私に倒されるか?」 「答えはひとつ・・・お前をメモリブレイクするだけだ。」 突然割り込む声。 トライアル・ドーパントが声の方向を見ると、 そこにはハードタービュラーに乗った仮面ライダーW サイクロンジョーカーエクストリームと禁書の姿があった。 ハードタービュラーを操作し、アクセルのもとへ現われるWと禁書。 その姿を見て、アクセルが声をあげる。 「禁書!それにフィリップと左!!」 「待たせたね、照井 竜。だが、今はおしゃべりする暇など無いようだ。」 「・・・ああ。しかし、どうやってメモリブレイクするつもりなんだ?」 「へへぇ~ん!それに関してはフィリップと禁書が対策済みさ!!」 翔太郎の意識がそう言うと、Wは右手を前に掲げた。 「「プリズムビッカー!!」」 胴体のクリスタルサーバーから現われるWの武器プリズムビッカー。 それを受け取ると、Wはアクセルに渡すのであった。 「これは・・・。」 「もうひとつ・・・禁書、君の番だ。」 「ハイハイなんだよ!」 そう言って、禁書がアクセルに何かを渡す。 「これは・・・ガイアメモリ?」 「そう・・・正確には『地球の記憶』と魔術や超能力といった『特殊能力』を組み合わせたハイブリットメモリといったとこかな?」 「てるい!これとてるいのメモリの力を合わせて、『青の通り魔』をボッコボコしてやるんだよ!!そうすればきっと勝てるんだよ!!!」 元気よく叫ぶ禁書。 「・・・。」 「てるい、どうしたの?」 黙るアクセルに対して問いかける禁書。 それに対し、アクセルが答える。 「禁書・・・今度こそ君との約束を果たす!」 「うん!ファイトなんだよ!!」 禁書の言葉を聞くと、アクセルは自身のドライバーからアクセル・メモリを抜き、 マキシマムカウンターを挿入した。 TRIAL! 響き渡るスターティングシグナルの音。 と同時に黄色くなるアクセルの装甲。 そして、スターティングシグナルの音が最高潮に達した時、アクセルの装甲は砕け、 新たなる青い装甲が包み込むように装着された。 「頼んだよ、てるい・・・うぅん!仮面ライダーアクセル トライアル!!」 Wから受け取ったプリズムビッカーを掲げるアクセル。 そして、彼はプリズムビッカーのマキシマムスロットにガイアメモリを挿入していく。 ENGINE!MAXIMUM DRIVE!! RAILGUN!MAXIMUM DRIVE!! IMAGINE BREAK!MAXIMUM DRIVE!! ACCEL!MAXIMUM DRIVE!! マキシマムスロットから飛び出す4つの光。 それらはひとつの球体となってトライアル・ドーパントを包み込んだ。 「な・・・なんだこれは?!」 驚くトライアル・ドーパントを上空へと持ち上げる光。 対するアクセルはプリズムソードを右手に持つと、左手のプリズムビッカーを投げ、マキシマムカウンターに持ち替えた。 押されるマキシマムスイッチ、そして勢いよく回転しだすトライカウンター。 それを確認したアクセルはマキシマムカウンターを空高く放り投げると、プリズムソードを構え、 そして上空で拘束されたトライアル・ドーパントに対しプリズムトルネードの体勢に入った。 「全て・・・振り切るぜ!!」 勢いよく飛び上がり、トライアル・ドーパントを球体ごと斬ろうとするアクセル。 だが、その瞬間、トライアル・ドーパントは自身を捕えていたエネルギーを破壊、 さらにはアクセルの持つプリズムソードをも掴んでしまうのであった。 「何?!」 「言ったはずです!神に等しき力を持った私が負けるはずないと!!」 「そんな!あいつにはプリズムトルネードも効かないのか?!」 上空での光景に対し、叫ぶ翔太郎の意識。 「照井さん・・・。」 上条も落胆した声をあげる。 だが、そんな状況に禁書が叫んだ。 「とうま!そんな悲しい声をあげてる暇なんて無いんだよ!!今はてるいを応援するんだよ!!!」 「禁書・・・。」 「だから、ホラ!みさかも、フィリップも!!仮面ライダー!!!」 「・・・うん!もうひと踏ん張りよ、仮面ライダー!!」 「照井 竜・・・見せてくれ、君の仮面ライダーとしての力を!!」 「照井!!」 「照井さん!・・・いや、仮面ライダー!!」 「仮面ライダー!!!」 『仮面ライダー!!!』 アクセルの耳に届く仲間の声。 その声が、再びアクセルに力を与える。 「井坂・・・お前の力は『神に等しい』と言ったな?」 「ん?何を急に・・・。」 「ならば貴様の負けだ。何故なら俺は・・・罪を重ねた者への『死神』なんだからな!!」 その時、上空からひとつの光が現われ、プリズムソードのメモリスロットに挿入される。 アクセルの耳に飛び込む、ひとつのガイアウィスパー。 それはハッキリとこう言っていた。 SKULL!MAXIMUM DRIVE!! 「ぅおぉおおおおお!!」 両手でプリズムソードをしっかりと握り、力を込めるアクセル。 「こ・・・この力は・・・!!」 耐えるトライアル・ドーパントであったが、突如力を増したプリズムソードに耐えることが出来ず、手を離してしまう。 その瞬間、全ての人の思いが詰まった一撃がトライアル・ドーパントの体を貫いた。 プリズムソードを手に、地面へ着地するアクセル。 と同時にマキシマムカウンターも彼の左手に収まる。 TRIAL!MAXIMUM DRIVE!! 「9.8秒・・・やはりこれが・・・井坂の絶望までのタイムだ。」 その言葉の直後、大爆発を起こすトライアル・ドーパント。 その直後、噴煙からはT2トライアル・メモリが飛び出すが、 『地球の記憶』と『特殊能力』のふたつの力を持ったメモリブレイクによって機能を停止、 さらには地面に激突し、そのショックで粉々に砕け散るのであった。 こうして、学園都市で起きた『青の通り魔』の事件は終焉を迎えた。 「てるい!」 アクセルのもとへ駆けつける禁書。 そして勢いよくジャンプし、そのままアクセルに抱っこされるのであった。 「禁書・・・やったぞ!!」 「うん!」 「照井さ~ん!」 「仮面ライダー!!」 駆けつける上条と御坂。 アクセルは禁書を下し、変身解除する。 「これで・・・終わりよね?」 御坂が問いかける。 「ああ、これで・・・。」 「いや・・・終わりじゃないかもしれない。」 照井の言葉をさえぎる声。 その声の主は変身解除したフィリップであった。 「どういうことなんです?!」 上条が言う。 「確かに井坂のメモリブレイクは出来た。だが・・・井坂自体の姿が見えない。」 そう言って、破壊されたT2ガイアメモリの方向を見るフィリップ。 仮面ライダーたちが行うメモリブレイクはガイアメモリ自体を破壊することであり、 素体となった人間に対してはダメージを与えることはあっても破壊することは無い。 だが、この戦いの場に残されていたのはメモリの破片のみであった。 「それじゃあ・・・また、あのドーパントが出るかもしれないって言うの?!」 「いや、それはねぇ。だが、井坂が生きてる可能性がある・・・って話だ。」 翔太郎が言う。 では、井坂はどこへ消えたのか? 学園都市、戦いの場から少し離れたエリア。 そこに、ひとりの白い服装に包まれた男に肩を貸してもらいながら歩く井坂の姿があった。 「申し訳ありませんね・・・加頭くん・・・こんな醜態を・・・さらす羽目になるとは・・・。」 「いえ、私は上からの命令に従っているだけですから。」 「・・・と言うと・・・財団Xは・・・私を・・・助けると・・・。」 「いえ。」 「何・・・?」 「上からの命令はこうです。『井坂 深紅郎に財団Xからの言葉を伝えろ』と。」 そう言って、唐突に井坂を突き放す加頭 順。 「どういう・・・ことだ・・・。」 「あなたを助けたのは、あなたに上からの言葉を伝えるという命令が遂行できなくなる故の措置。 あなたの命を助けるつもりなど財団Xも・・・そして私も毛頭ありません。」 「そんな・・・。」 「財団Xからの言葉をお伝えします。『試作型T2ガイアメモリに関するデータの収集は完了した。 以後、今回のデータをもとにT2ガイアメモリを量産させる。 しかし、T2ガイアメモリは財団Xの秘密事項であるにもかかわらず、仮面ライダー側に一部データを露呈させてしまった。 そのため、少しでも機密漏えいを阻止するため、井坂 深紅郎の口を封じさせてもらう』・・・とのことです。」 「そんな・・・助けてくれ・・・助けてくれ!」 「残念ですが、私は上の命令に従うしかないサラリーマンですから・・・。」 そう言って、加頭はガイアメモリを取り出して構える。 UTOPIA! 変貌する加頭の体。 そして、現われた異形の存在は無抵抗な井坂へゆっくりと迫る。 「う・・・うわぁあああああ!!」 学園都市に木霊する井坂の断末魔。 だが、その声に気づく者は誰ひとりとしていなかった。 いや、ひとりだけその声を聞いていたものがいた。 「随分と派手にやってるな、兄弟。」 加頭の背後に現われるひとりの男。 「おや、あなたは・・・確か、風都でのNEVER増員計画の指揮を執っていたはずでは?」 「ああ・・・だが、Xビッカー一基だけじゃ不安でな。そこで財団Xに何らかの援助を・・・と思って来てみたら・・・。」 「言っておきますが、T2ガイアメモリの譲渡は出来ませんよ?」 「ばれたか。しかしよう、兄弟!なんとかならないのかい?」 「さっきの会話を聞いていたなら分かるでしょう。私は上の命令に従うだけのサラリーマン。 いくらあなたと同じNEVERと言えど、私の一存であなた方への援助は出来ないのです。」 「そうか・・・。」 「・・・しかし・・・これは私の独り言です。」 「・・・ん?」 「T2ガイアメモリは原本完成後、空路でディガルコーポレーション地下の工場で量産化する予定です。輸送日はまだ未定ですがね・・・。」 「ほほう・・・こりゃ、たいそうな独り言だな。」 「この言葉をどう捉えるかはあなたにお任せします。では、私は次の仕事があるので・・・。」 そう言って、男の前から立ち去る加頭。 「・・・兄弟、ありがたく使わせていただくよ。その言葉も・・・そしてT2ガイアメモリもな!」 叫ぶ男。 その男の手には、ガイアコネクタを模した<E>のガイアメモリがあった。 『青の通り魔事件』から2週間後。 風都にある風都警察署、その中の会議室に大勢の人が集まっていた。 上条、御坂、禁書、白井、初春、翔太郎、フィリップ、そして亜希子。 何も知らされずに来た8人はどうしたら良いか分からず、なんとなく椅子の上でソワソワとしていた。 「それにしても・・・突然呼び出すなんて、竜くんどうしたんだろうね?」 「さあな・・・照井なりのサプライズでもあるんじゃねぇの?」 「・・・ん?」 突然、禁書が小さな鼻をヒクヒクさせる。 「どうしたんだい、禁書?」 「ねぇ・・・良い匂いがしない?」 「ん?・・・む、これは・・・。」 「・・・間違いなく、『アレ』ですわ。」 「確かに・・・『アレ』の匂いですね。」 「・・・いや、ただの『アレ』じゃねぇ・・・まさか!!」 上条が叫んだ瞬間、会議室の扉が開き、エプロン姿の刃野とその部下で同じくエプロン姿の真倉 俊、 そして割烹料理人のような姿をした照井が現われた。 「待たせたな。刃野、真倉!」 照井の声を受けて、ドアの外から何かを持ってくるふたりの刑事。 真倉は小山のように盛られたご飯が入った平皿が何枚も乗ったカートを、 刃野は先ほどの匂いを発する大きなズンドウ鍋が乗ったカートをそれぞれ会議室に入れるのだった。 刃野からカートを受け取り、ズンドウ鍋の蓋を開ける照井。 そこに入っていたのは・・・。 「照井さん・・・これって・・・。」 「ああ、『恐竜や』バイト中に教わった<フルーツスパイシーカレー>だ。」 「やったぁ!カレーだぁ!!・・・でも、なんで?」 禁書が照井に聞く。 それに対し、照井はさらにカレーを盛り、禁書の前に置いてこう言った。 「約束したろう?トライアル・ドーパントを倒せなかったら、禁書に腹いっぱいご飯を御馳走してやる・・・と。」 「え・・・でも、倒したんじゃ・・・。」 「結果的にはな。だが、一度は敗れ、禁書や御坂を悲しませることになってしまった。 その罪滅ぼしになるかは分からんが・・・まあ・・・とにかく、俺に質問しないでさっさと食え!」 照井が笑顔で答える。 「えぇっと・・・うんっ!!」 その笑顔に答えるかのように、禁書もいっぱいの笑顔で返事する。 全ての行き渡るカレー。 そして、禁書の「いただきます!」という言葉を合図に勝利の宴が始まった。 「辛っ!でも旨っ!!」 「この味・・・このスパイシーさ・・・ゾクゾクするねぇ!」 「おかわりなんだよ!」 「私も!」 「早っ!ビリビリも早っ!!」 「満腹が・・・お前たちのゴールだ。」 会議室に響き渡る嬉しそうな声。 その声は外にも伝わっていた。 そして、その光景をひとりの男が見ていた。 「さすがだ、仮面ライダーアクセル!そして、上条 当麻!!あの時は70点なんて言っちまったが・・・これで100点だ。」 そう言って、頭の帽子を被り直す男。 それは鳴海 壮吉であった。 「もう、心配はいらないようだな。風都には翔太郎、フィリップ、そして照井 竜。学園都市には上条 当麻と御坂 美琴。俺の出る幕じゃねぇ・・・。」 そう言って、鳴海がその場を去ろうとしたその時だった。 彼の頭上を通り抜ける一台のヘリコプター。 そして、それを追いかけるかのように飛ぶ一機の飛行機。 そのふたつが通り抜けた瞬間、風都に何とも言えない不気味な風が流れた。 「これは・・・。」 飛行機の飛んで行った方向を見る鳴海。 「・・・もう一仕事必要かもしれないな。」 その数十分後、風都上空にてヘリコプターが謎の大爆発を遂げるという事故が発生。 さらに、ヘリコプターに積まれていた26本のガイアメモリが爆発の衝撃で飛散、風都中に巻かれるのであった。 今まさに、新たなる『死神』によるパーティタイムが始まろうとしていた・・・。 おわり
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第1話 風都から来た男 東京都の実に三分の一を占める巨大な街である学園都市。その人口はゆうに二百三十万人になり、大部分の人口は学生である。 高さ五メートル、厚さ三メートルの完全な円形のコンクリートに囲まれた学園都市はさながら一つの国のようであった。 学園都市にいる学生は他の街にいる学生にはない特別な「力」を持っていた。その力とは腕力でも権力でも財力でもない。 その力とは超能力であった 全部で二十三学区に区切られた学園都市にいる学生で超能力を持っている学生は七人しかいない。その七人しかいないかと言うとそうではない。 能力はレベルというランクで分けられているのだ。レベルは0~5までで、 レベル0の者は無能力者、 レベル1の者は低能力者、 レベル2の者は異能力者、 レベル3の者は強能力者、 レベル4の者は大能力者、 レベル5の者は超能力者に分けられる。 レベル5ともなれば軍隊とも渡り合えるほど強力な力を行使できる。 ここ最近の学園都市は魔術師と呼ばれる者達と、この学園都市の超能力者達との戦いが続いていた。学園都市で行われた覇星祭の際にも 学園都市を支配下に置こうとした魔術師と、学園の生徒との間で戦闘があったばかりである。 その魔術師と超能力者との戦いの場となったこの学園都市に一人の男が足を踏み入れる。 男の名は左翔太郎。職業は探偵である。 風都から2時間かけてこの学園都市にやってきた。 「ここが学園都市か……、噂に聞いた通り凄ぇ街だな」 翔太郎は学園都市のその広大さに感心していた。科学技術では自分の住んでいる街である風都以上かもしれないと考えた。 風都以外の街で探偵の仕事をするのは始めてだ。土地勘もないし、少し苦労するだろうと思った。 「ぼやぼやしていられねえな……、早くナワリを見つけねぇと……」 翔太郎の持つ写真にはアラブ系の男性が写っていた。 二日前、翔太郎はここ最近風都で起きている十字教教会連続襲撃事件の犯人を捜してほしいと、十字教教会のシスターから依頼をうけた。一週間で六つもの十字教教会が何者かに襲撃、焼き討ちにされたのだ。捜索をしていく内に、翔太郎は自身のいきつけのアラビア料理屋の店長であるナワル・ラディが犯人だと知る。既に十五人の神父、シスターをその手にかけていたナワリは、翔太郎の見慣れた気さくな料理屋の店長とはまるで別人だった。その顔は狂気に満ちた殺人鬼そのものの顔だった。ナワリは翔太郎の追跡を振り切り、逃走してしまう。 その翌日、今度はナワリの店の店員であり、ナワリの弟であるカリールからナワリ捜索を依頼される。カリールの話によれば、ナワリは学園都市に潜伏しており、学園都市にいる十字教の神父やシスターを襲おうとしていると言うのだ。 「これ以上ナワルが殺人に手を染めるのは耐えられない。今までナワリを止められなかった自分が恥ずかしい。頼む翔太郎、ナワリを止めてくれ」 涙ながらに懇願するカリールに心を打たれた翔太郎は学園都市へと足を踏み入れるのであった……。 出入りすることの厳しい学園都市に入る為のIDをカリールが用意してくれたのだ。 「この学園都市の通行許可証まで手配してくれるなんてな……。あいつの為にナワリを一刻も早く見つけねえと」 翔太郎は足の歩みを速め、学園都市への奥へと進む。 ◇ 翔太郎は第7学区内を歩いていた。学園都市でも第7学区は中学・高校といった中等教育機関を主としており、学校に通う学生や勤務教師たちの生活圏となっており、それに付随する形で生活商店などが立ち並んでいる。 翔太郎は学園都市に来てから、学園都市のその広大さに驚いていた。なにより科学技術が風都かそれ以上に進んでいるかもしれないと思っていた。 前方から学生らしき二人の女の子が歩いてくる。翔太郎はこの二人にナワリが知らないか聞いてみることにした。 「そこの君達、この男を見なかったかい?」 「いいえ、見ませんでした」 「私も」 頭に大量に花をつけている子と、もう一方の髪の長い子は首を横に振った。 頭の上がお花畑の女の子は初春飾利。柵川中学一年生で、風紀委員(ジャッジメント)である。風紀委員(ジャッジメント)とは学園都市の治安維持に努める学生選抜の集団である。腕には盾のマークがある腕章を付けており、これが風紀委員(ジャッジメント)の証だ。 髪の長い女の子は佐天涙子。初春と同じ柵川中学一年生で初春の友人である。 「そうかい。じゃあ見かけたらこの名刺に書いてある、俺の携帯電話の番号に連絡してくれ」 翔太郎は自分の名刺を初春と佐天に渡す。 名刺には”ハードボイルド探偵 左翔太郎”と書かれている。 「「ハ……、ハードボイルド探偵……?」」 二人は翔太郎の名刺の気障ったらしさに目が点になっていた。 「それじゃ」 「え……、はい」 「ど……、どうも」 翔太郎は足早にその場を去っていった。 「ったく……、また手がかりなしか……」 翔太郎はもう二十人以上の人間にナワリの事を聞いたのだが、一向にそれらしい情報を入手することができない。 その時翔太郎の携帯から電話が鳴る。 「翔太郎、ナワルは見つかったかい?」 「いや、もう二十人以上に聞いたんだが一向に見つからねえ」 フィリップからの電話だった。 「翔太郎、カリールも学園都市に行くそうだ。僕は止めたんだけどね……、彼がどうしてもと言うから」 フィリップの話によれば、カリールは自分はただ待っているだけなのが許せず、自分も一緒にナワルを捜したいと言ってきたのだ。 「……仕方ねぇな、じゃあ待ち合わせ場所を決めるか」 翔太郎は渋々カリールの参加を許可した。 「念の為にメモリガジェットを飛ばしとくか」 翔太郎は所持していたメモリガジェットである、バットショットを飛ばす。 「やっぱこれを使うっきゃねぇよな」 ◇ ”連続十字教教会襲撃事件発生! 犯人はアラブ系の男 学園都市に潜伏中の可能性あり! 見かけたら警備員(アンチスキル)に 通報を!” 上条当麻のクラス全員に渡されたプリントにそう書かれていた。 「おいおい、宗教抗争がここ日本で行われてるなんて……、おまけに学園都市内にそれを持ち込んでくれるなよ……」 物だ。 当麻は帰宅ルートから外れた空き地で、クラスメイトの土御門と共に今朝、担任である月詠子萌から渡されたナワル風都で起した十字教教会襲撃事件を伝えるプリントを見て呆れるように言う。それに覇星祭の時の魔術師との戦いからまだそう経ってない。いい加減争いの種を撒かないでほしいと頭を抱えていた。十字教と対立する宗教といえばムスリム教しかない。この二つの宗教は昔から争いがあったのだ。こういった事件は今に始まらないが、この都市にまでそういった争い事を持ち込まれるのは迷惑千万も甚だしいと当麻は思った。 「やっぱこの男……、魔術師か?」 「いや、その男は魔術師じゃないぜよ」 「え?」 「俺の読みが正しければ……、その男は恐らくガイアメモリの使用者……、”ドーパント”の可能性がある」 ガイアメモリとは風都で流通しているメモリのことである。メモリといってもパソコンに使用するメモリではない。 ”人体に直接差し込み、人間を超人化させるメモリ”だ。強力なメモリではあるものの、人格を凶暴化させる などの副作用もある危険性を孕んだメモリでもある。そのガイアメモリを使用する者を総称して”ドーパント” と呼ぶのだ。 当麻自身も噂程度だがメモリのことを聞いたことがある。 「噂には聞いていたけど、まさかこの学園都市に来るなんて……」 「こいつにとっては十字教の信者なら誰でもお構いなしみたいだからな。ようするに誰でもいいわけだ。 もしかしたら魔術師以上に厄介な相手かもしれないし。カミやんは禁書目録の所に行ってやんな。あの子も十字教のシスターだし」 土御門の言葉に当麻ははっとしたように立ち上がる。 「そうだな……!俺は一足先に帰ってインデックスにこのことを伝えてくる!」 当麻は駆け足で自分の自宅へと急いだ。 ◇ 「ちょっと~!あたしの饅頭返せぇ~!」 銀髪の髪の毛に、白い修道服を着た小柄なシスター、インデックスは第7学区内の清掃ロボットに、買った饅頭を吸い込まれ てしまい、清掃ロボット相手に格闘していた。以前にもドーナツを清掃ロボットに吸い込まれてしまったことがある。 「いい加減返しなさい~!ぐむぐむ……!」 インデックスは清掃ロボットに噛み付いて、吸い込まれた饅頭を取り返そうとする。 「こらこら、そんなことをしても食べ物は戻ってこないぞ?」 「ん?」 インデックスは声の方向に目を向ける。目の前に、袋を携え、長身の黒スーツを着たアラブ系の男性が立っていた。年齢は27歳位だろうか。なかなか端正な顔立ちの男だ。 「饅頭の代わりにこれを食べてごらん?」 男は持っていた袋からからオムレツを差し出す。 「こ、これ食べていいの?」 「ああ、モチロンだよ」 インデックスは差し出されたオムレツを口の中に頬張る。 「お!おいし~~!も、もっとない?」 インデックスは出されたオムレツの余りの旨さに感激し、二枚目を要求する。 「ああ、あるよ。俺に付いてきたら百枚でも二百枚でも食べさせてあげるよ」 「ひゃ……くまいも!?」 インデックスは食べられる量に驚き、男に付いていくことにした。男の口元がほんの僅かに薄気味悪く笑ったことにインデックスは気づかなかった。 「俺はナワル。ナワル・ラディだ。以後お見知りおきを」 ナワルは慇懃無礼という具合にインデックスに自己紹介をする。 「オムレツを沢山食べさせてがくれるっていうから来てみれば……何でなにもないんだよ?」 インデックスはオムレツをたらふく食わせてやるというナワルの言葉に釣られてこの廃工場に来た。しかし 見渡す限り食べ物などありそうもない。 「食べ物……ね。”食べれる物”は何も食料だけじゃないことを知っていたかな?それに胃の中に食料を 送り込むだけが”食事なんて言わないんだがねぇ……」 「じゃあ胃の中に食べ物を送り込む以外の食事って何なんだよ?」 インデックスは興味深そうにナワルに質問する。 「それは……」 「ぎ!?」 ナワルはインデックスの細い首を驚異的な握力で掴みあげる 「相手の”苦痛”を喰らうことさ」 ナワルの顔は先程のおどけた時とは別人のように冷酷無比な殺人鬼のそれへと変貌していた。 「が……ぐ?、苦じい……」 ナワルは凶悪な笑みを浮かべてインデックスを自分の頭の高さまで持ち上げる。 インデックスはナワルの残忍な眼光を見て身震いした。この男の目は完全に正気ではない。人を苦しめること、傷つけること、殺すことに喜びを感じているような目だ。その目を合わせているだけでも全身から汗が流れ出してくる。 「貴様の五体をバラして十字教会本部に送りつけてやろう。十万三千冊の魔道書の記憶などあのお方は不要だとさ。抵抗するならしてみろ。俺のメモリの力で貴様の自衛手段などいかに脆いか証明してやる。おっと・・・手足の指の骨を一本づつへし折るという手もあるな・・。どの道貴様は楽に殺しはしない」 「な……んで……ごんな……こと」 「なんで?貴様等十字教の連中が我らムスリムにしてきたことを少しは思い出したらどうだ?償いという名の地獄を見せてやる」 ナワリに首を絞められつつも、辛うじて質問をしているインデックスに、ナワリはあざけ笑うように言う。 「もうやめろ!ナワル!」 怒声が廃工場内に響く。 「誰だ!?」 ナワルはインデックスから手を離す。 「げ……、げほっ!げほっ!」 インデックスはナワルによほど強く首を絞められたのか、激しく咳払いをする。 「お前は……、翔太郎じゃないか。また俺を止めに来たのか?」 翔太郎はバットショットでナワルとインデックスの姿を捉え、カリールとの待ち合わせを後回しにし、廃工場に急行したのだ。 ナワルはまたかという顔で翔太郎を見る。この前逃げたのは常連客であり、顔馴染みの翔太郎を傷つけたくなかったからだ。ナワル自身、十字教徒、及びそれに連なる者には容赦はしないが、それ以外の人間に対しては基本的に傷つけるつもりはない。 「よせ……、お前とは戦いたくはない。これは俺自身の聖戦(ジハード)だ」 「戦いたくないだと?十五人もの人間を殺した奴の台詞とは思えねえな!」 翔太郎は二日前、ナワリがまだ少女と言っていい年齢の十字教のシスターを殺す所を目撃している。あの時のナワリの目は完全に狂人のそれだった。今更お前とは戦いたくないなどという言葉に翔太郎は怒りを露にする。 「君は早くこの場から逃げろ!」 翔太郎は蹲っているインデックスにこの場から逃げるように警告する。 「……う、うん」 インデックスは翔太郎の言葉に従い、おぼつかない足取りで、ナワルの傍から離れ、廃工場を出る。 ナワルはインデックスを捕まえるでもなく、黙ってインデックスが立ち去るのを眺めていた。 「どうした?あの子を殺すんじゃないのか?」 「十字教の信者など山ほどいる。別にあの小娘でなければいけないなどということはない。どうしても戦うというのであらば望み通り相手になってやる!」 ナワルは啖呵を切り、ガイアメモリを取り出す。 『ジャッカル!』 そのメモリを自分の右腕に嵌めていた黒い皮の手袋を外し、手に刻まれた生体コネクタにメモリを差し込む。 ナワルの身体は変貌を遂げ、漆黒の身体となり、顔はエジプト神話のアヌビス神に酷似していた。 「いくぜ、フィリップ!」 「わかったよ翔太郎」 翔太郎、フィリップもメモリを取り出す。 『サイクロン!』 『ジョーカー!』 翔太郎、フィリップは自分の腰に巻いてあるWドライバーにメモリを差し込む。 『サイクロン・ジョーカー!』 右半身は緑色、左半身は黒色の装甲を纏った仮面ライダーWに変身する。 「いくよ、翔太郎」 「おう!」 ◇ 第7学区内の常盤大中学の制服を着た女学生が勢いよく自動販売機を蹴り上げて、出てきたジュースを飲み干す。 その女学生こそ学園都市でも七人しかいないレベル5の能力者である御坂美琴であった。美琴の能力は電撃使いである。美琴が操る電撃が強力無比であることから美琴は「常盤台の超電磁砲(レールガン)」という異名を持っていた 「あ~、このジュースにはゲコ太グッズが入ってなかった」 美琴の通う常盤台中学はいわゆるお嬢様学校であるのだが、当の美琴本人はお世辞にも言動はお嬢様とは言い難く、竹を割ったような性格であった。しかしその性格故か生徒間での人気は高いようである。しかし美琴も年頃の女の子、ファンシーグッズに目がないなどの少女らしさも垣間見せる。 「全く……、お姉さまったらまたそのようなはしたない真似を……」 美琴の行動を呆れながら見ているのは美琴の後輩で、風紀委員(ジャッジメント)である白井黒子であった。 「誰か~!そのひったくりを捕まえて~!!」 「あら?」 「え?何?」 黒子と美琴は声の方向に目をやると、スキルアウトらしい不良が女子学生のカバンをひったくり、逃げている様子が飛び込んできた。 「よし!私に任せ……、ん?」 美琴が電撃で、不良の足を止めようとすると、不良の前にスカーフを被った少女が立ち塞がる。 「あぁん!?何だテメェ!」 年齢は美琴、黒子と大差はなさそうな少女はアラブ系の顔立ちで、髪の毛を隠す形でスカーフを被っていた。褐色の肌がにあう美しい少女だ。 「あの人に返してあげなさい。でないと痛い目見るわよ」 少女は不良に臆することなく静かに言う。その言葉は静かながらもどこか凄みがあった。 「うぅ……、どけぇ!!」 不良はポケットからバタフライナイフを取り出し、少女に切りかかる。 「は!」 少女は不良のナイフを持っていた手を捻り上げ、小手捻りの要領で、不良を地面に叩きつける。 「言ったでしょ……、痛い目見るって」 「す……、凄い」 少女の活躍を見ていた美琴はその余りの華麗さと早業に呆然と見とれていた。 「これこれ、ジャスミン、手荒なことはやめなさい」 ジャスミンを注意する年老いた声が聞こえた。 声の主は、アラブ系で、ムスリム教でも高位に位置する導師の服を着た、杖を持ち、髭を蓄えた壮年の男性でった。 「お養父さま……」 ジャスミンは導師服の男に駆け寄る。 「全く……、あんな危ない行為をして……。私に任せておけばあの男も痛い目にあわずに済んだものを」 「お養父さま、お困りの人がいたら救い出すのが私達ムスリム教の信じる教えでは?」 何やら二人で些細な言い争いを始めている。 「あ……、あの……!ありがとうございました!」 不良にカバンをひったくられた女学生はジャスミンに礼を言う。 「いえ、いいのよ。貴方も怪我はなかった?」 ジャスミンは物腰柔らかな口調で女学生を気遣う。 女学生は礼を言うと、二人に見送られながら帰って行く。 「おお、そこの娘さん達」 導師服の男が美琴と黒子の方に近づいてくる。 「君達は常盤台中学の学生さんかね?」 温和な表情を浮かべて導師服の男が話しかけてくる。 「え、ええ……」 「実はわしの養女であるこのジャスミンが常盤台中学に留学生として入ることになったのでな。君達に挨拶しておこうかと思っての」 「え?この人が常盤台に?」 美琴は目の前で華麗な活躍をしたこの娘が常盤台に入学することを聞き、少々戸惑った様子だった。 「ジャスミンよ。よろしくね」 ジャスミンはそう言うと、美琴と、黒子に握手する。 「この方は私の養父で、タハール導師様です」 「タ、タハール導師!?」 ジャスミンの言葉を聞き、黒子は仰天した。タハール導師といえば、サウジアラビアの大富豪にして、世界でも五本の指に入る程の 資産家なのだ。 「タハール導師様、せっかくですからわたくし達ががこのジャスミンさんに第7学区内の案内をして差し上げますわ」 黒子は目の前の世界有数の大富豪に気に入られたいようだ。 「おぉ、それは助かる。ジャスミンや、この娘さん達と上手くやるのだよ?」 「ええ、お養父さま」 美琴と黒子はその時ジャスミンとタハール導師が口元で薄く笑ったことに気づいていなかった。 ◇ 廃工場では激闘が続いていた。 ジャッカル・ドーパントに変身したナワルの戦闘力は高く、Wに変身した翔太郎とフィリップを苦しめていた。 「翔太郎、奴の動きは素早い。サイクロン・トリガーで行こう」 「よし!」 『サイクロン!』 『トリガー!』 射撃戦士、サイクロン・トリガーに変身し、ナワルに連続射撃を浴びせる。 サイクロン・トリガーとはトリガーマグナムに風属性の力を込めての速射戦を得意とする。トリガーメモリの出力が高いため、サイクロンメモリが押され気味でバランスは良くなく、弾の威力が低めで精密射撃にも適してないが、 連射と風による拡散効果で、より広い範囲の狙撃が可能な形態だ。 「ちぃ!調子に乗るな!」 銃撃を浴び続けたらやばいと感じたナワルは、優れた動体視力で、サイクロン・トリガーの射撃を華麗に避ける。 「は、早い!」 「こういう早い奴ってのは捕まえるのが一番だ!」 『ルナ!』 『メタル!』 ルナ・メタルに変身し、ルナの力で軟化したメタルシャフトを鞭のようにして、ナワルを縛り付ける。 ルナ・メタルとはルナの幻想の力をメタルシャフトに込め、シャフト本体をムチのようにしなやかかつ自在に操り、敵を拘束したり、投げ飛ばしたりなどのトリッキーかつ豪快な技を使うことが可能な形態だ。 「ぐぅ!」 メタルシャフトに巻きつかれたナワルはありったけの力で足掻く。 「大人しくしろナワル!」 翔太郎はメタルシャフトに縛られたナワルを自分の手前まで引き寄せる。 「生憎だが、まだ俺は捕まるわけにはいかん!」 ナワルは口から光弾を発射し、Wに当てる。 「うわぁ!」 Wはナワルの光弾を受けて後ろに吹っ飛ぶ。 メタルシャフトの拘束が緩んだのを見計らい、ナワルは脱出し、廃工場の外に飛び出す。 「翔太郎!ナワルが逃げる!」 「待て!」 しかしナワルは素早く、廃工場の外に出たが、もうナワルの姿はなかった。 「ちきしょう……、また逃げられたぜ」 翔太郎は二度もナワルを取り逃がしたことを悔しがる。 「仕方ねぇ、フィリップ、俺はカリールとの待ち合わせの場所に行く」 「わかった」 翔太郎は変身を解除し、カリールとの待ち合わせの場所に向かった。 ◇ 「しかし宗教対立かぁ……、まさか十字教系以外の宗教もこの街に入り込むとはね」 当麻は自分のマンションのエレベーターで教会襲撃のプリントを眺めていた。 「そんな争い事をこれ以上増やしてたまるかよ……!」 当麻は不毛な争いを一刻も早く終わらせようと考える。 「ただいまー、今帰ったぞインデックス」 当麻は部屋は電気を付けておらず、インデックスはまだ帰っていないのかと思った。 「と……、とうまぁ……」 自分の部屋から消え入りそうな声で当麻に話しかけてくる声……、間違いないインデックスだ。 「どこにいる?インデックス!?」 これはただ事ではなと思った、当麻は急いで自分の部屋に入る。 インデックスが布団の毛布を被って、床に蹲っていた。 「どうした?インデックス?」 「とうま……」 インデックスの目は涙が滲んでいた。ナワリに首を絞められた恐怖が忘れられないのだ。 「ど、どうしたんだ?インデックス!?」 「今日……、襲われたんだよ……、ムスリムに……」 ◇ 「ここが学園都市か……、風都に似てどこかきな臭い街だ」 学園都市に入ってきた赤い革ジャンの男は風都警察署超常犯罪捜査課課長の照井竜だ。 照井もまた、ナワリを追ってこの学園都市に入ってきた。 「今回は真倉を署に置いておいて正解だったな……」 この学園都市は風都以上に危険な街だということを予感していた。それを踏まえ、今回は一人で乗り込んだのだ。 「左の奴も来ているという情報があったが……、俺は俺のやり方でやるか。ここは風都じゃないしな」 以前、翔太郎と誤解から戦った際にも風都のルールに従うということで和解した。しかしこの学園都市になれば話は 別だ。ここで思い切り自分流の捜査ができるのだ。 「まずはこの学区から調べるか」 照井は学園都市の第7地区へと足を運んだ。 「貴方、風都署の刑事さん?」 「そうだ。お前達は?」 「風紀委員(ジャッジメント)ですの」 照井が第7地区で調査を進めていると、照井の前に立ち塞がった二人の女学生がいた。 常盤台の超電磁砲(レールガン)御坂美琴と、風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子だ。 「照井竜、貴方を連続十字教会殺人の犯人として拘束します!」 「何……?」 照井はわけがわからなかった。自分が教会襲撃の犯人を追う為に学園都市に入ることを許可されたのだ。 捜査をしているのに風紀委員(ジャッジメント)に捜査妨害をされ、あまつさえ犯人扱いとは。 「一体どういうつもりだ?」 「私達は目の前にいる犯人を捕まえるだけ……、その事がなにか?貴方、自分が何をしたか胸に手を当てて考えて 下さらないかしら?貴方がわざわざわたくし達に捕まりきた理由をお聞かせ願いませんか?」 照井はここまで学生にコケにされるとは思わなかった。ここは力づくでわからせるしかない。その時、美琴の電撃が照井の足元を走った。 「で、電撃!?」 「そ、あたしは常盤台の超電磁砲(レールガン)って呼ばれててね。素直に捕まったほうが身のためだよ?それからあんた、なんで教会を 襲ったわけ?」 「俺に……」 「はい?」 「俺に……質問を……するな!」 照井の怒りは頂点に達し、アクセルメモリを取り出す 『アクセル!』 照井はアクセルドライバーにアクセルメモリを差し込む。 「変……身!」 『アクセル!』 スロットルを捻り上げ、真紅の装甲を纏った仮面ライダーアクセルに変身する。 「さぁ、振り切るぜ」 「こいつ……、変身した!?」 「お姉さま、この方相手に手加減はいらないようですわね」 「来てみろ学生。風都の警察を怒らせたらどうなるか思い知らせてやる」 次回 ムスリムの矜持
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「■■■■■■■■■■■■」 声が聞こえて俺の頭は睡眠状態から覚醒する。 恐らく俺を起こそうとしていたのだろう、体をゆさゆさとゆさぶらるのも感じた。 勘弁してくれよ、今日は土曜日だぜ?お袋もチョットは空気を読んでくれたっていいんじゃないかねぇ…… いまいち機能しない自分の脳味噌から浮かぶ考えは一つ。 全てを無かったことにして二度寝することだ。 昨晩は深夜まで億泰とゲームやってたから睡眠時間は無いに等しい。 一応言っておくが俺たちは不良だが酒は飲んでねぇぞ!ただ夜更かししすぎて眠いだけだからな!! ……俺は誰に弁解してるんだ?やっぱり寝不足は恐ろしい。 寝起きに襲ってくるスタンド使いがいなかったのは本当にラッキーだったな。 この東方仗助、悪運だけは杜王町でもピカイチだz―――――― 「いい加減に起きやがれ!!!」 「ゲボォ!」 は……腹がヤベェ……… 無常にも俺の腹に突き刺さった蹴りは驚くほど正確に鳩尾に入った。 込み上げてくる吐き気と必死に戦う俺には進むべき二つの道がある。 1、吐く 2、我慢する 恐らく1を選んだらある程度は楽なはず。しかしそれを選ぶわけにはいかない。 起きないだけで蹴りを入れてくるほどお袋の機嫌はナナメなのだ。その上、布団にゲロッた日にゃ命の保障すら出来ない。 ならば2しかないのか? この苦しみに延々と耐え、その後腹に残る違和感と暫らくの間戦うのか? 俺はそんな事やりたくねぇ!! いや、待てよ……一つだけいい方法があるじゃねぇか! 布団にゲロッちまったらその後にクレイジー・ダイヤモンドで元に戻す。 ゲロは吐けるし、布団も汚れねぇ。 この世に完璧って言葉があるんなら今の計画の事を言うんじゃねぇか? 流石に寝巻きに付くのはいただけねぇな。それに今ので完全に目が覚めちまった。 んじゃあ起き上がって、起床一番にスッキリゲロ吐きと行きますか。 ガバァッッ ―――――――――? 俺は自室で寝てたよな? それに俺の家族はお袋だけだよな? 大体、寝たときはパジャマを着てたよな? 混乱する頭を何とか冷静に持ってゆこうとする。 よくよく考えたらクレイジーDで直したらゲロが口から胃に戻るじゃねぇか。 いや、まずゲロは多分直せねぇ。 しかも目の前にお袋がいるんだからスタンドはヤべーよなスタンドは。 考えれば考えるほど先ほどの考えにツッコミが湧いてくる。 ホントに寝起きって奴はヤベェ…… 自己嫌悪に陥りそうな思考を必死に振り払って、今最もやるべき事を必死に模索。 そして俺は自分の正面にいたボーイッシュな女の子に声をかけた。 「寝ゲロってホントにあるんすかね?」 ★ ☆ ★ その後、唐突に発せられた奇言に笑い転げる少女、坂本龍馬から必死に話を聞きだした仗助。 曰く、ここはJAPANという国の死国という所らしい。 しかし、彼の知っている四国はこんなに殺伐とした場所ではないはずだ。 詳しい話を聞こうと必死な仗助の様子に辟易しながらも丁寧に説明を続ける龍馬。 彼女の話が終わったとき、彼はその場にしゃがみ込んで頭を抱えだした。 本来彼は頭を使うタイプではない。 戦闘になれば話は別だが、普段の彼は能天気そのものだ。 しかし、彼女の話を聞いた後は必死に考察をせざるおえなかった。 『鬼や侍がひしめき合ってる世界』 彼女にその話を聞いたときは心臓が口から飛び出るかと思うほど驚いた。 吸血鬼の話は承太郎から聞いていたが、鬼の存在は全く聞いた事がない。 それに侍も彼にとっては時代劇の中だけの話だ。 突拍子の無い話をする龍馬を最初は疑っていた仗助。 だが、彼女の目は本気であった。 狂人の物ではなく、真の意味で本気の彼女の瞳。 殺人鬼、吉良吉影を追う過程で様々な人物と出会ってきた仗助には分かる。 彼女はまっすぐな人物であると。 だから仗助は龍馬を信じてみることにした。 そして彼は結論を出す。 『ここはパラレルワールドである』と。 初めはスタンド攻撃も視野に入れていた仗助だったが、その可能性は即座に否決された。 空間を作り出すような強大なスタンド使いが居る可能性は無に近い事と、 能力で仗助を移転させたとしても未だに攻撃の影すら見えない事。 短時間で考えた非常に穴だらけの推論であるが、ある程度的を得ているように思えた。 (でもよー、その場合俺を転移させたのはどいつになるんだ…… まさか神様が呼んだなんて事はありえねぇよな?) 次から次へと沸き起こる疑問。 しかし答えが出る事はない。 (まぁ、来れるなら帰れるって事だよな? しばらくは龍馬と一緒に行動して情報を集めるしかねっか…… アイツには異世界から来た事は伏せたほうがいいよな?流石に説明しにくいぜ 頭がパーな奴とは思われたくないしな) 結局、持ち前のポジティブさで絶対に帰れると断言した仗助であった。 ★ ☆ ★ 「でよ、譲ってのがスゲー馬鹿なんだ馬鹿。ウルトラ級の馬鹿」 「へ~お前にも“ジョウ”って仲間が居るんだな。 俺の知り合いにも一人承がいるぜ?その人はヤバイくらい頭が切れるがな」 「っていうかお前も仗じゃね?」 「あっ、そういえばそうだったな」 「おいおい、お前も実はかなり馬鹿なんじゃねぇのか~?」 龍馬達の住むキャラバンへと移動を続ける途中の他愛の無い会話。 先ほど仲良くなったとは思えないほどの意気投合っぷりだ。 「そういえば仗助……会ったときから気になってたんだがいいか?」 「ん?言ってみろよ」 「お前のその髪型ってさぁ――」 刹那、空気が凍りついた。 東方仗助におけるタブー中のタブー。 親友であろうと貶した者は全てぶちのめされる彼の聖域。 大げさに思われるだろうが、それが彼のリーゼントだ。 だが、そんな事を知る由もない龍馬は口を更に動かす。 「超クールだよな!俺も男だったらそんな髪型にしてみたかったぜ! どうやってセットしてんだよ?毎日大変じゃねぇのか!?」 矢継ぎ早にリーゼントを褒めちぎる龍馬。 一方の仗助であったが完全に放心状態であった。 今までの人生で髪型を貶された事は星の数ほどあれど、ほめられた事は一度も無い。 故に彼は龍馬の行った言葉を全く理解できなかったのだ。 「この……髪型がカッコイイ…?」 呆然とした様子で声を絞り出す。 「何度も言わせんなよ。超クールだって言ってんだろ」 龍馬が先ほどと同じ言葉を繰り返す。 しかし返事が返って来ない。 仗助は下を向いて肩を震わせているだけだ。 「おい?どうした仗助?」 ひょいと龍馬が下から覗き込むと彼は泣いていた。 キリマンジャロの雪解け水を飲んだときと言っても過言ではない。 「おでぼがみがだぼぼべべぐれだのヴァあんだがはしめべば」 「いや、落ち着いて話せよ……」 軽くどころかドン引きだ。 180センチもある体格のいい男が泣きじゃくる姿を見て不快にならないほうがオカシイ。 しばらく歩いて仗助が泣き止んだ頃に質問してみた。 「なんでさっきはあんなに泣いてたんだよ?」 「いや、俺の魂を認めてくれたのが初めてだったからついな……」 「魂?その髪型がか?」 「あぁ、少し長い昔話になっちまうが聞くか?」 龍馬が興味津々な様子で頷くのを確認した後、真っ赤な目を擦りながら彼女に語りかける仗助。 死にそうな熱を出した事。 病院へいこうと急ぐも、途中雪で完全に車が止まった事。 焦る母親の元へ一人の少年が現れた事。 その少年は自分のポリシーである学ランを犠牲にして自分たちを救ってくれた事。 彼の髪型がリーゼントだった事。 そして、自分はその人を尊敬してリーゼントになった事。 全てを話し終えたとき、目が真っ赤になっているのが一人から二人に増えた。 鼻を啜りながらいい話ジャンと繰り返す龍馬。 一々大げさに首を振ってそれを肯定する仗助。 泣きべそをかいた二人は仲良くキャラバンへの道を進んでいった。 ★ ☆ ★ どっちが先に気付いたかは分からない。 しかし、お互いに顔を見合わせたのは同時であった。 「これは……」 「血の匂いだな……間違いない!鬼共が襲撃してきやがったんだ!!」 焦燥を隠し切れない龍馬。 キャラバンにはゴンや譲、美禰といった猛者は揃っている。 だがそれでも全てのメンバーを守り切れるわけじゃない。 「クソッ!」 ゆっくりお喋りしながら帰っていた自分の不甲斐なさに思いっきり毒づく。 「仗助!お前は戦えるのか!?」 並んで走りながら、隣にいる仗助に叫んだ。 ガタイはいいから一般人よりは強いのでは?と期待をかける龍馬。 その期待は間違いではない。 短期間で数々の戦闘をこなした彼はちょっとした百戦錬磨である。 だから仗助は自信を持って答えた。 「バリバリいけるぜ!」 まだ見ぬ仲間を救うために全力でキャラバンへと走る仗助。 その目に宿るは黄金の意思。 学ランの襟から除くは誇り高き血統の紋章。 彼と龍馬は一陣の風となって乱戦状態となっているキャラバンへと突っこんでゆく。 鬼という異形を前にしても恐怖心は微塵も感じない。 己の半身であるスタンドを発現させて鬼をぶん殴るだけだ。 龍馬は初めて見るスタンドに驚いた様子を見せたがそれを気にしている場合ではない。 「闘いが終わったらそれが何か教えろよ!」 「おうよ!!」 言い終わった後に、二人は別々の方向へと切り込んでゆく。 「ドララララララララアアアッツ!!」 こうして、東方仗助の短い平穏の時は終わりを告げた。 to be continued…
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□ ジルの朝は早い。 花の世話をして、ラッピングし、見栄えよく整える。 繁盛して忙しい日々を過ごしているが、ジルは花の世話に手を抜いたことがない。 霧を吹きかけて、時計を見ると六時を示していた。 まだ店を開けるまで三時間もある。ジルは店の二階にある住まいへと階段をのぼった。 鼻に卵が焼けるいい匂いがする。焼かれたパンが並ぶ中、やはり母親は起きていたかと思った。 「母さん、おはよう」 「あ、ジル。お店の方はいいの?」 「準備は済ませたよ。後は店を開くだけさ」 それで、とジルは一室に視線を動かす。彼は心配そうにその部屋を見つめていた。 それもそうだ。なぜなら…………と思考したところで件の部屋から大きな音が聞こえてきた。 ジルは母親と顔を合わせ、部屋に駆け寄る。 「エールさん、どうしましたか? なにかあったんですか?」 ドンドン、と叩く。ジルは返ってくる返事を待った。 時間は少し遡る。 日が昇りカーテンの隙間から陽光がエールを照らした。 かわいらしい顔をしかめ、黒い瞳が周囲を見回す。 エールの知らない場所だ。ボーッとした頭では考えがまとまらない。 『起きたか』 「あ、モデルZ。おはよう……」 エールは寝ぼけ眼のまま、上半身を起こして、ズキッと腹部に鈍い痛みが走った。 エールは思わず「うっ!」と呻き、バランスを崩して派手に転ける。 ゴン、と大きい音を立てて額を地面に打った。 「いったぁぁぁ~~」 涙目になりながらも、エールは周囲を見回した。 自分がどこにいるのか把握しなければならないからだ。 すると、ドアからコンコン、とノックする音が聞こえてくる。 『エールさん、どうしましたか? なにかあったんですか?』 「ジル……さん?」 エールが声の主に驚いていると、ドアノブが回り焦った様子の少年が姿を見せた。 エールが地面に座り込み、赤くなっている額を抑えている姿を見届け、ジルが勢いよく駆け寄ってきた。 「どうかしましたか? なにか不都合でも……」 「あ、いえ。そういうんじゃないです……」 エールはジルに対応しながらも、昨日の出来事を少しづつ思い出してきた。 腹部に手当がされている。そこまで思考して、エールはジルに掴みかかった。 「って、ジルさん! エリファスさんは無事ですか?」 「母さん……? 母さんならピンピンしているよ。昨日は倒れているエールさんを母さんが見つけて大変でした。なにがあったんですか?」 エールはエリファスが無事である事実にホッと安堵する。だが今度は別の問題が起きてしまった。 ジルが心配そうに黒縁メガネの下の青い目をうるませて、エールを見つめている。 心底心配であったとわかる分だけ、エールは答えに詰まったのだ。 正直に言うわけにはいかない。そして、エールは嘘をつくのが苦手であった。 「こら、ジル。エールちゃんが困っているでしょう?」 優しい声に助けられ、エールは車椅子が部屋に入るのを目撃する。 最近の車椅子は高性能だが、身体を機械に置き換える現代では珍しい代物であった。 最初見たときは驚いたのだが、今では慣れたものである。 エールは笑顔を浮かべて、守ろうとした女性に視線を向けた。 ジルと同じく柔らかい金髪のショートカット。優しげな面差しに、凹凸の激しい女性なら羨ましがる身体。とてもジルを産んだとは思えない。 料理を作っていたのか、エプロンをかけている。車椅子を動かし、エリファスはエールへと微笑んでいる。 「お久しぶりです、エリファスさん」 「そんなにかしこまらなくてもいいわよ。今朝ごはん作っているからベッドで休んでいなさい。ジル、行くわよ」 「ちょっと、母さん……。まあ、エールさんも立ち上がるのが辛ければいってください。手助けにきますので」 ジルはそうエールに告げて、部屋を出て行く母親を追っていった。 パタン、とドアが閉まったときエールに疲れが押し寄せてくる。 『やっといったみたいだね』 そして、エールは恐る恐るモデルXの言葉に振り向いた。 明らかに背後に怒りのオーラが見える。普段はおとなしいモデルXが珍しく怒っていたのだ。 エールはゴクリと生唾を飲み込んだ。 『モデルX、今回の件は俺にも責任がある。だから……』 『モデルZは黙っていて。エール、確かにみんなを守りたい気持ちはわかるけど、今回は失敗だったよね?』 「う……ごめんなさい」 エールは頭を垂れて素直に謝る。激怒したモデルXは本人が頑固なのも相まって、タチが悪い。 嵐が過ぎるのを待つように身を縮めて耐えるしかなかった。 もっとも、今回は確かに反省点も多い。敵の能力を侮ったのと、これ以上犠牲者を出させないためとはいえ焦ったことだ。 死んだジルウェにも叱られるだろう。 モデルXがエールの短絡的な性格を責める中、ふと疑問を口に出す。 「……そういえば、アタシが負けた後はどうなったの?」 『話を逸らそうとしていない? まあ、いいけど。……それが妙なことにあのワームは攻撃を中止したんだ』 「攻撃を中止……?」 さすがにモデルXも説教を中止し、昨夜の違和感をエールへと報告してきた。 モデルXはまた本人を前にするしか確かめる手段はない、と結論をつける。 エールもその意見に同意だ。 「それじゃ、攻撃を中止してどうしたの?」 『どうもこうもない。ワームは姿を消して、エリファスが近づきエールの応急手当をした。変身は俺たちの判断で勝手に解いたから、バレてはいない。 すぐにジルも姿を見せ、エールをここに運んだ。近くに病院がなかったし妥当な判断だ』 「うわー、アタシって間抜けだ」 モデルZに改めて説明してもらうと、死にたくなってきた。 自分の作戦を推したプレリーや、しぶしぶながらも了解してくれた天道に申し訳がない。 『焚きつけたのは俺だ。責任は俺がとる』 モデルZが頼もしいことをいってくれるが、それならモデルXの今の怒りも受けて欲しいと思った。 しかし、そう都合よくはいかない。なぜなら、下手をすればジルもエリファスも死んでいた。 エールが自覚した瞬間、悪寒が背筋を昇る。エールの脳裏に懐かしい光景が浮かんだ。 ―― メットールをマスコットにした遊園地が炎によって赤い色に染め上がる。 ―― ヒトビトの悲鳴が上がり、人ごみの中, 小さなエールは母親の手を握っていた。 ―― イレギュラーの群れの銃弾で建物が破壊される。 ―― エールを安心させようと振り向いた母親の後ろに、イレギュラーが現れて……。 『エール?』 「モデルX……ごめん。ちょっとボーッとしていた」 『……調子も悪そうだし、今はここで切り上げよう。細かい打ち合わせは天道さんと合流してからだ』 「うん。まずはあの二人に挨拶して、プレリーたちに無事を知らせる」 『そうだね、それが一番だ』 モデルXの同意を得て、エールは立ち上がった。 もっともモデルXの怒りは解けていない。 いつもなら恐ろしい事態なのだが、今のエールには気になることがあった。 あの日の悪夢、すべての始まり。 セルパンを倒し、ジルウェに想いを託されて乗り越えたと思っていた。 もしかしたら自分で思っていたほど、自分は強くないのだろうか? エールは頭を振って不安を吹き払い、ドアノブに手をかけた。 □ 「よかったぁ……エールが無事で」 プレリーはエールからの連絡があった通信機を切って安堵する。 彼女の身を心配したプレリーだが、深夜にガーディアンの部隊を総動員するわけにはいかなかった。 ゆえにその日は捜索を天道だけに任せるしかなかったのだ。 「さっそく天道さんやみんなにも教えないと」 プレリーはさっそく通信機を手に、今も捜索活動を続ける数人の仲間へと連絡をとる。 エールの心配をして志願してくれたのだ。まずは彼らを安心させることから先だ。 プレリーは捜索隊のリーダーを、調査員と兼任する天道へコールを鳴らした。 こんがりと焼けた食パンとベーコンに目玉焼きが乗った皿が食卓に並ぶ。 手元にはバターが置かれており、新鮮なレタスに乗っかる半切りのトマトと、サラダもある。 エールが席についたのをエリファスは嬉しそうに微笑んで、話しかけてきた。 「さあ、どうぞ。召し上がれ」 「はい。いただきま~す」 ぐ~、とエールのお腹も主張しているため、遠慮なくいただくことにする。 傷はまだ痛むが、無視できるレベルだ。本能には抗えない、と無駄に哲学なことを考えてパンに手を付ける。 はむ、とバターを塗ったパンを噛みしめて、エールは生きている実感を味わった。 一口パンを噛みちぎると、余裕が出たのかエールは一つの事実に気づく。 お客さんで恩人ということもあり、かしこまった口調でエールは尋ねることにした。 「そういえばエリファスさん、ジルさんはどうしたんですか?」 「ジルなら店を開けているの。私はこんな足だし、ほとんどあの子に任せているわ。それよりエールちゃん?」 「はい?」 「今は仕事中じゃないし、楽にしていいのよ。その方が私もありがたいし」 エールはエリファスの言葉に数瞬だけ悩んだ。 もっとも、楽なほうを提案してくれるのはありがたい。 客仕事のため敬語は使えるのだが、エール本来の性格には合わなかった。 「……うん、ありがとう。それでアタシがなんであそこに倒れていたかは……」 「聞かない方がいいかしら? ならそうする」 「え? いいの?」 エリファスはエールに困ったような笑みを浮かべて、エプロンで手をふいた。 エールのために用意した牛乳を置きながら答える。 「そりゃあ、女の子があんなところで傷を負って倒れているもの。事情をきかせて欲しいわ」 「えーっと、ごめんなさい! さっきから謝ってばかりだけど、こればかりは話せないの!」 「そう、ならいいわ。ところで、連絡はついた?」 「ええ。ここに迎えに来るって」 「きっと心配していただろうから、謝らないとダメよ?」 「……はーい」 エールは天道が取り乱している姿を思い浮かべようとしたが、あの超然とした男が取り乱す姿が想像できなかった。 とはいえ、天道が探索チームの指揮をとったのだとプレリーはいう。 ものすごく迷惑をかけた自覚があるため、身を悶えさせたかった。てか、一人なら絶対悶えている。 エールが天道にあわせる顔がないと、パンを勢いよく齧った。 (よかった。エールさんは元気みたいだ) ジルは安堵して花束をラッピングする。母親から彼女が起きて、朝ごはんを食べたと聞いたのだ。 今はきっと二人でお茶をしているに違いない。エールを迎えに来るという人物がくるまで、彼女は母の相手をされるのだろう。 ジルは大口の注文があったため、運搬業者が来るのを待つ。 準備はすでに出来ていた。カラン、と音がして自動ドアの方へ視線をやる。 入ってきた整った顔立ちの男にジルは見ない人だ、と思って声をかける。 「いらっしゃいませ!」 「すまないが、客ではない。エールがここに居ると聞いて迎えに来た」 「ああ、そうですか。少しお待ちください。今呼んできますので」 「ぜひ頼む」 偉そうな態度にもジルは「おかしな人だ」程度にしか印象を抱かなかった。 ジルが上にいる母に、迎えが来たと内線電話で告げる。 すぐにでも降りてくる、と伝えると男は別の方向へ視線をやっていた。 「花が好きなんですか?」 「まあ、そこそこにな。ところで、あの大量の青いバラは?」 「大量に欲しいと注文がありましたので、用意したんです」 そうか、とだけつぶやいて男が沈黙した。 ジルが笑顔を向けて、眼鏡のフレームの位置を直しながら話しかけようとしたとき、二階より人が降りてくる気配を感じる。 エールが恐る恐るといった様子で姿を見せ、天道の姿を見たと同時に頭を垂れる。 「ごめんなさい! 天道、つい先走って……」 「そうだな、おかげで皆に心配をかけた。だが…………」 天道と呼ばれた男の表情が柔らかくなったのを、ジルは見過ごさなかった。 ほんの刹那の間だけ覗かせた表情だったため、頭を下げているエールには見えなかっただろう。 彼が見せた親愛の情にジルは頬が緩んだ。だからこそ、次の言葉はジルにとっては意外でなかった。 「無事でよかった。心配したぞ」 エールがキョトン、と天道を見つめている。 それに対し、まるで兄のように天道はエールを迎えた。 □ 天道に連れられて、エールを探索に来たガーディアンの仲間たちのもとへ向かっていく。 川が流れ、橋を通るときにエールは天道に声をかけた。 「ねぇ、天道」 「どうした?」 「……天道はどうして、アタシを助けてくれるの?」 「簡単だ。おばあちゃんが言っていた。模倣となるべき人間は、すべての兄であるべきだと。 俺は生まれたときからそういう宿命を背負っている。そういうことだ」 「いや、どういうことよ」 エールが相変わらずの天道に呆れる。もっとも、彼の行動には感謝してもしたりないが。 天道が言う言葉、特におばあちゃん絡みものは本気であることに気づいている。 だからこそ、不思議でしょうがない。彼はなぜエールに対し、肉親のような感情を抱いてくれるのか。 そうエールが思ったとき、発砲音が響いて天道に抱えられた。 身体浮いた、と思ったときには天道は向きを変え、敵と対峙している。 エールも降りて、相手を睨みつけた。 「さすがに反応がいい……それに、ようやくこいつを使える相手に出会えたか」 役者のように整った顔立ちの男が、紫色の剣の刃に舌を這わせていた。 左手に握るのはサソリ型のデバイス。おそらく新しいゼクターであろう。 「ワームか」 「その通り! 仮面ライダー同士の戦いを始めましょう。天道総司!」 男はそう言って剣とサソリ型デバイスを合体させる。 『Hen-shin』の電子音と共に、男を六角形の金属片が包んで見覚えのある姿へと変えた。 赤紫の胴体部。各種にチューブが埋め込まれて、中を液体が通るのが見えた。 蠍の尾を模した頭頂部に、横一文字のバイザー。ドレイクやカブトとはまたデザインだが、仮面ライダーであることに間違いはなかった。 天道がいうには、すべてのゼクターはワームの手中にある。ならばこのワームが昨晩エールを襲ったのか。 エールは仮面ライダーに対抗するため、モデルXとドレイクゼクターを構えるが天道が抑える。 「エール、今は力を温存しておけ」 「…………わかった」 「やけに素直だな? いつもなら食ってかかるはずだが?」 「昨日のことを反省しているの! 人が下手に出たのにもう……」 「わかっている。変身」 エールが愚痴るのも構わず、天道がカブトへと変身した。 銀色の仮面ライダーと、赤紫の仮面ライダーが正面から睨み合う。 風が吹き、橋から小石が落ちる。水面が揺れると同時に二人は地面を蹴った。 『Cast off』 同時に奏でられた電子音と共に、二人の仮面ライダーの鎧がはじけた。 宙でぶつかり合うパーツの中、カブトは目の前のサソリを模した仮面ライダーを見つめる。 マスクドフォームのときとは違い、全身濃い紫の装甲。緑の二つの複眼。銀のベルト。 かつてサソリのマスクド・ライダーシステム、サソードの名を伝え聞いたことがある。 おそらくこのワームの前の使い手だが、剣の腕前は一流だったとのことだ。 目の前のワームの腕を見定めようとしたとき、サソリを模した頭部に光が宿り日本刀とほぼ同等のリーチの剣を振るわれる。 カブトは冷静にクナイガンの刃で受け止めて、後方へ跳躍した。 「逃がさん!」 サソードが逃げるカブトを追いかけて距離を離さない。 接近戦に長けるサソードが距離を保つのは当然の選択だ。 「舞え!」 流れるようにサソードの斬撃がカブトを襲う。 右から弧を描く刃の軌跡を上半身を倒して躱す。 サソードがすぐに剣を斬り返し、すくい上げるように左から逆袈裟に襲いかかってきた。 クナイガンで剣を弾き、刃が宙に浮いたのを確認する。 「甘い!」 サソードが狂ったように笑い、一旦刃をひいて突きを繰り出した。 速度が速すぎて避けきれない。カブトの頬に刃が走る。 ザッ、とようやくサソードから距離をとることに成功するが、削れた装甲より血が流れた。 どうやら斬られたらしい。 「天道!」 エールの心配する声が聞こえる。カブトはサソードに視線をやった。 「天道に攻撃が当たった? モデルX……」 『いや、まだその必要はないようだな』 「モデルZ。でも、始めて天道に……」 『皮一枚。それに、あの程度の剣技では天道に届かない』 モデルZにいわれて、エールは再び戦いを見る。サソードが地面を蹴って、大ぶりに剣を振るう。 カブトに刃が届きそうになった瞬間、カブトは一瞬でサソードの懐に潜り込んだ。 「なに!?」 サソードが叫ぶが、カブトは冷静にサソードの右手首に掌打を打ち込んだ。 サソードのバランスが崩れ、カブトは容赦なく脇腹に拳をめり込ませる。 骨が折れる鈍い音が響く。エールは痛さを想像して顔をしかめた。 「がはっ!」 「どうした? 俺が伝え聞いたサソードの足元にも及ばないぞ」 「ふざけ……ッ!」 サソードが怒るが、エールはそれは命取りだと判断する。 事実、サソードの突きは躱されて、カブトによって腕をつかまれ地面に背中を叩きつけられた。 「クソ……ライダースラッ……」 サソードはゼクターの尾を押し込もうとして、顔面を殴られて強制的に中断された。 エールは少しでもカブトが危ないと考えたことを恥じる。いつも以上に相手にならない。 (けど、どういうこと? あいつは昨日アタシを……) 『エール、他のゼクターだ。気をつけて!』 エールが疑問に持つが、答えを得る前にモデルXの言葉が思考を中断する。 モデルXとドレイクゼクターを用意して、すぐさまロックマンDXへと姿を変えた。 ドレイクゼクターの弾丸を吐き出し、乱入してきたゼクターを撃つが選けられる。 やがて影はカブトへ襲いかかり、カブトは大きく跳んで躱した。 サソードとカブトの距離が開いたとき、間に白い大きな影が現れる。 二メートル近くある鍛え抜かれた巨漢。白いスーツをまとい、白い帽子の下の鋭い瞳がカブトとエールに向けられる。 その瞬間わかった。目の前の男はただ者ではないと言うことを。 「お久し振りですね、天道総司」 「黄金のライダー……まさかここでも会うとはな」 白いスーツの男が青いバラを向けた。 大事そうにつまむ青いバラの花びらが、風に舞う。 「黒崎一誠、仮面ライダーコーカサスです。この世界の英雄、ロックマンZXの少女。以後お見知りおきを」 外見に似合わぬ丁寧な言葉が、エールには逆に恐ろしかった。 黒崎は後ろで無様に倒れているサソードに視線をやり、カブトと対峙する。 サソードにかける言葉は当然冷たいものとなった。 「いつまでそこに倒れているのですか? 天道総司は押さえてあげますから、さっさと逃げたらどうです? あの少女からは自力で逃げてください。そこまで面倒をみきれないので」 「くっ……」 サソードの悔し気な声に、エールが反応する。カブトに視線を送られて頷いた。 黒崎の脅威を計算に入れて、エールに任せるしかないのだ。ここでサソードを逃がすわけにはいかない。 サソードとエールがベルトのスイッチをスライドする。 「「クロックアップ」」 同じ響きが橋の上で唱えられた。風のように二人が姿をかき消す。 クロックアップの時間でハンデがあるが、あの程度の能力のサソードなら相手にもならない。 問題はやはり、目の前の男だ。 「ここにゼクトはない。それでもお前は戦うのか?」 「いったはずです。バラが見つめてくれるのはもっとも美しく、もっとも強いもの。 人間だろうがレプリロイドだろうがワームであろうが……ロックマンであろうが、支配者にふさわしければそれでいい」 「そうか、ならば戦うしかないな」 「もとよりそのつもり……」 黒崎が空手の型のような演舞を繰り出した。金色のカブトムシ型ゼクター、コーカサスゼクターが周囲を舞い踊る。 右手の銀のライダーブレスレットに、コーカサスゼクターが突き刺さった。 「変身!」 黒崎の巨体を六角形の金属片が包みこむ。 現れた金色のライダーを睨み、カブトは本気の構えをとった。 □ 「いい加減しつこい!」 サソードが剣を振りながら言い捨てた。エールは冷静に見極め、上半身を沈ませる。 頭部のヘルメットを剣がかすめて、無防備の腹部に銃弾を撃ち込んだ。 「ガハッ!」 サソードが地面を転がり、痛みに身悶えている。 モデルZのいったとおり、たいした相手ではない。 だとするとおかしい。昨日のワームはかなりの手練だった。 このサソードが、あのワームではありえない。 そう考えていると、クロックアップの時間が終わる。 サソードのクロックアップは、エールの与えたダメージでとっくに切れていた。 「一つ聞かせなさい。ここにアナタ以外のワームがいるの?」 「知らん……死ねぇ!」 懲りない奴だ、とエールは呆れて頭部に回し蹴りを叩き込む。 紫電一閃、サソードがビルの壁に背中を打ち付けた。 エールはもうこいつを倒そうと考え、ドレイクゼクターのヒッチスロットルを引く。 「これでおしま……」 「エールさん……?」 ドレイクゼクターの銃口を向けようとしたエールに、聞き覚えのある声が届いた。 後ろを振り向くとジルが青いバラの花束を抱えて立っている。 同時に『Clock up』の電子音が響いた。まずい。 「命が惜しければ動くな! キサマたちは近寄るんじゃない!」 サソードがジルの背後に回り、動きを拘束する。 ジルが現れたことに動揺して一瞬隙を作ったことを後悔した。 『なんともお約束な台詞だな』 「うるさい……くそっ! くそっ! どいつもこいつもバカにして……」 サソードががなりたてて、刃にエネルギーを充填し、斬撃を飛ばしてきた。 エネルギーの刃をエールが避けると、ヒステリックにサソードが叫ぶ。 「避けるな! こいつがどうなってもいいのか?」 「そんな……」 エールは悔しさに歯噛みする。ジルを助けなければならないが、このままではエールともども死んでしまう。 迷うエールに、サソードが追い討ちをかけた。 「変身を解け、ロックマン」 『駄目だ、エール。従ったところで、奴が約束を守る保証もない!』 モデルZが忠告するが、サソードヤイバーの刃がジルの喉にめり込む。 血が一筋を流れたのを見て、エールの脳裏に自分を安心させようとした母の姿が浮かんだ。 一度だけ唇を噛み締め、エールは変身を解いた。 「そうだ、それでいい。天道総司に受けた屈辱、その身体で支払ってもらうぞ!」 サソードが嗜虐心をむき出しにして、刃を振るう。 エールの右腕が浅く切られ、血が流れた。嬲る気であろう。 「いい子だ、微動だにしないとはな」 サソードは笑い、今度はエールの右肩から血が噴出す。 エールは反射的に右目をつぶり、痛みを堪えた。 どうにかして人質を放さないと、手出しができない。 ドレイクゼクターが姿を消しているのだ。反撃の機会を伺う。エールの目は死んでいなかった。 「さあて……次はどこを切ろうか。かわいい顔だけは最後にして…………」 だが、サソードの言葉は最後まで紡がれない。 サソードがよろめき、後ろに下がる。エールは眼前の光景に困惑の表情を浮かべた。 「やれやれ。逃げるだけなら、大人しく人質になってあげようと思っていたのに」 その声はエールや母親へかけていた優しさの感情が微塵も含まれていない。 まるでゴミを見るかのように、ジルはサソードを見下している。 ジルの右手が昨夜襲ってきたワームのそれに変わり、サソードの腹部を貫いていた。 「サソードヤイバーは返してもらう。君たちに一度返したものだが、君に使われたくない」 ジルは吐き捨てて、彼の全身が水面の如く波打った。 同時に姿が変わり、スズムシを模したベルクリケタスワームへとなる。 エールをくだした強敵の姿だ。 「う……そ…………?」 ペルクリケタスワームが腕を引き抜き、サソードの変身が解ける。 同時に緑の爆発が上がり、名も知らぬワームを背にエールと対峙した。 『エール、変身しろ!』 モデルZが叫ぶが、エールは動かない。 まるで悪夢の中にいるような錯覚を受けて、エールは声が出せなかった。 右腕の傷の痛みに流れる血。そして硝煙の匂いが、ただ現実であるとエールに主張を続けた。 To be continued……
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BGM:http //www.youtube.com/watch?v=daYKIeUFvH8 feature=related 仮面ライダーW、今回の依頼は? 「ちょっと待って、翔太郎。・・・なんで、『君だけがWになってる』の?」 「・・・え?」 『私は・・・私は・・・。』 「・・・雪華綺晶?」 『!・・・どうして、あなたが私の名を・・・?』 「俺はな・・・お前みたいな彼女持ちが大っ嫌いなんだよ!それにな・・・そいつが仮面ライダーなら尚更なんだよっ!!」 STAGG! TRIGGER!!MAXIMUM DRIVE!! 「『トリガー・スタッグボマー!!』」 「だぁれが殺した駒鳥さん・・・。」 仮面ライダーWは唖然としていた。 ロブスター・ドーパントのメモリブレイクを完了し、あとはいつものようにメモリの所有者を警察に引き渡すだけだと彼は考えていた。 だが、その流れは突然聞こえてきたマザーグースの歌をきっかけに遮られてしまった。 突如として発生した、白い薔薇の花吹雪。 それはロブスターのメモリの所有者の体を包み込み、そして彼の体を今度は薔薇のツタで包み込むのであった。 「おい・・・これって・・・。」 この光景を見て、思わずつぶやく左 翔太郎。 彼の頭の中ではある光景が浮かんでいた。 翔太郎自身の右腕が薔薇のツタに包まれ、そしてそのツタに咲いた白い薔薇の花から雪華綺晶が現れた時の光景を・・・。 そして、Wの目の前でツタから芽を出す1つの白い薔薇。 その芽は人間の右目に当たる部分で大輪の花を咲かせると、 それが合図であったかのようにツタだらけだった体を『1人の少女』へと作り変えるのであった。 「私の体・・・私の体・・・ふふふふふ・・・。」 「そんな・・・馬鹿な・・・。」 Wの前に姿を現した存在、それは紛れも無く、仮面ライダーWの右半身として翔太郎と意識を共有しているはずの雪華綺晶であった。 「・・・きらきー!どうして、君が・・・君がもう1人いるんだ?!」 翔太郎が思わず叫ぶ。 『どうして・・・あなたが・・・。』 「?!きらきー、何か知ってるのか?」 もう1人の自分を見て動揺する雪華綺晶に対して、反応する翔太郎。 一方、もう1人の雪華綺晶は2人のやりとりをジィーっと見ていた。 「いいな・・・。」 「・・・あぁ?」 「いいな・・・そっちの私には友達がいる・・・こっちの私には友達がいない・・・。」 「なんだと・・・?」 「友達・・・欲しい・・・私が・・・奪う!!」 そう言って、Wに襲い掛かろうとするもう1人の雪華綺晶。 だが、それよりも先に攻撃を仕掛けた者がいた。 もう1人の雪華綺晶を襲う炎の拳、その炎は彼女の胸部を炎で包み込む。 その攻撃主はW・・・いや、雪華綺晶の意識であった。 「・・・きらきー?」 翔太郎が雪華綺晶の意識に声をかける。 『お願い・・・。』 「?」 『お願い・・・もう・・・私の前に現れないで!!』 絶叫する雪華綺晶。 それと同時に、雪華綺晶の意識が形成するヒート・ボディはまるで雪華綺晶の感情に呼応するかのように燃え上がるのであった。 「?!きらきー、落ち着け!!」 突然の事態に叫ぶ翔太郎。 だが、その声が耳に入らなかったのか、雪華綺晶の意識は拳に炎をまとって、 もう1人の雪華綺晶に襲いかかるのであった。 OP:http //www.youtube.com/watch#!v=updaAwZ_WDE feature=related 「やめるんだ、きらきー!」 再び、翔太郎が雪華綺晶に言う。 しかし、雪華綺晶の意識はまるで暴走するかのように、炎の拳でもう1人の雪華綺晶に襲いかかる。 それに対し、腕から薔薇のツタを伸ばしてWの攻撃に対抗するもう1人の雪華綺晶。 ぶつかり合う拳と薔薇のツタ、そしてそこから発せられる火花。 戦いは一進一退であった。 「ふふふ・・・。」 すると突然、もう1人の雪華綺晶が笑いだした。 『何がおかしいのよ!!』 雪華綺晶の意識が、今までに発したことの無いような怒りの声をあげる。 「あなたには・・・力がある・・・。」 『・・・力?』 「あなたには力がある・・・でも・・・私にはない・・・欲しい・・・力が・・・力が・・・力が!!」 叫ぶもう1人の雪華綺晶。 そして、Wの前に狂気に満ちた顔をさらけ出すのであった。 「な・・・何なんだ?!」 突然現れた恐怖の表情に、思わず驚く翔太郎。 すると、もう1人の雪華綺晶は翔太郎の驚きによって出来た隙をついて腕からツタを放つ。 一直線にダブルドライバーへと向かうツタ。 そして、右サイドにあったヒートのメモリに絡めると、そのままメモリを半ば強引に抜くのであった。 ヒートメモリを手に取り、嬉しそうにするもう1人の雪華綺晶。 と同時に、先ほどまで怒りの炎で燃え上がっていたWのヒート・ボディはメモリの力を失い、もとの姿へと戻るのであった。 「あっ?!おい、危険だからそのメモリを返せ!!」 Wのメモリの恐ろしさを知る翔太郎がもう1人の雪華綺晶に向かって叫ぶ。 だが、もう1人の雪華綺晶はその声を無視する。 「・・・くそっ!こうなったらヤケクソだ!!きらきー、トリガー・フルバーストだ!!」 LUNA!TRIGGER!! メモリ・チェンジし、ルナ・トリガーとなるW。 そして間髪いれずにメモリブレイクの体勢に入ろうとする・・・が、 トリガーメモリをトリガーマグナムに装填する寸前、Wの右腕が動きを止めてしまう・・・いや、止められてしまった。 「何っ?!」 その原因は地面から伸びた薔薇のツタが右腕に絡みつき、固定されてしまったためであった。 それに気づき、トリガーマグナムで右腕のツタの破壊を試みようとする翔太郎。 だが、それよりも先に、新たに生えたツタによって左腕も固定され、Wは身動きが取れない状況となるのであった。 ツタの発生源である、もう1人の雪華綺晶を見るW。 目線の先には、右手に握られたヒートメモリを舐めるように見て嬉しそうにしている彼女の姿があった。 「ふふふ・・・私の力・・・私の力・・・みぃつけた!」 嬉しそうだった顔から、再び狂気の顔を見せるもう1人の雪華綺晶。 すると、右手のヒートメモリを自分の肉体を形成した時のように薔薇のツタで包み込み、 そしてガイアメモリ自身をそのまま自分の体内に取り込むのであった。 「私の力・・・炎の力・・・燃やしてやる・・・燃やしてやる!!」 叫ぶ、もう1人の雪華綺晶。 と同時に、彼女の体は先ほどのWのように炎をまとうのであった。 「よせ!そのメモリを解放するんだ!!」 翔太郎が叫ぶ。 だが、もう1人の雪華綺晶はその声に耳を貸さず、 それどころかメモリの力を使って両手に発生させた炎の弾を拘束されたWに向けて放つのであった。 「ぐあっ?!」 『きゃあっ!!』 その体を炎に包まれ、苦しむW。 しかし、もう1人の雪華綺晶は2人の苦しむ姿を楽しむかのように炎の弾を連続発射するのであった。 「もうすぐ・・・あなたは消えてなくなる・・・そして・・・その男は・・・私の仲間になる・・・私の物となる・・・体も・・・力も・・・。」 もう1人の雪華綺晶が言う。 一方のWは、炎の弾による連続攻撃で戦意を喪失し、Wの姿のまま地面に倒れこむ。 「私の体・・・私の力・・・。」 もう1人の雪華綺晶がWの力を乗っ取ろうと、倒れこむ彼のもとへ近づこうとしたその時だった。 ENGINE!!MAXIMUM DRIVE!! 突然聞こえてくるガイアウィスパー。 そして、その声を合図に上空から“A”の形をした光の塊がもう1人の雪華綺晶に襲いかかる。 それに対し、もう1人の雪華綺晶はとっさに円盤状の炎の壁を作り出し、上空から飛んできたエースラッシャーを相殺させるのであった。 「ふん・・・どうやら随分と骨のあるお嬢様のようだな。」 倒れこんだWの前に降り立った男が言う。 その声に、今まで気絶していたWが反応した。 「て・・・照井・・・。」 そこには、エンジンブレードを肩にかけて構える仮面ライダーアクセルの姿があった。 「あなたも・・・仲間・・・。」 「仲間だと・・・?俺はこいつの保護者みたいなもんだ。」 「仲間・・・力・・・あなたも・・・奪う!」 「・・・随分と耳の遠いお嬢様だな。」 再び狂気の表情を現わして、アクセルに襲い掛かるもう1人の雪華綺晶。 だが、その表情に屈することなくアクセルはエンジンブレードの引き金を引いた。 STEAM! エンジンブレードから多量の水蒸気が発せられ、白い空間と化す周囲。 もう1人の雪華綺晶はその中に飛び込むが、彼女が目星を付けたはずの場所にアクセルたちの姿は無く、 その気配もすでに波止場から消え去っていたのであった。 「力・・・体・・・仲間・・・。」 何かに取りつかれたかのように、再び同じセリフを繰り返すもう1人の雪華綺晶。 そして、Wとアクセルの力を狙い、彼らを追おうと歩き出したその時、彼女の足に何かが触れた。 「・・・力・・・みぃつけた!」 雪華綺晶は目を覚ました。 そこは、鳴海探偵事務所内のドックのベッドの上であった。 『ここは・・・。』 起き上がる雪華綺晶。 しかし、その途端に痛みが右肩に走るのであった。 『くっ・・・!翔太郎!!』 雪華綺晶は突然ハッとし、自分の宿主である翔太郎を見る。 彼の体は重傷にまでは至らなかったものの、もう1人の雪華綺晶の攻撃によって所々に火傷を負っていた。 「・・・あ、雪華綺晶ちゃん!」 雪華綺晶の耳に鳴海 亜希子の声が飛び込んでくる。 声の方向を見る雪華綺晶。 そこには亜希子、その後ろには照井 竜と救急箱を持ったフィリップの姿があった。 『あ・・・亜希子さん、翔太郎の容体は?!』 「ああ、翔太郎なら・・・。」 亜希子に代わって、フィリップが言おうとしたその時だった。 「俺なら心配ねぇよ、きらきー・・・。」 『翔太郎!!』 翔太郎が包帯の巻かれた体を起こして答える。 「大したもんだよ、翔太郎。君のタフさには、僕も毎回驚かされるよ。」 「昔から体力には自信があったしな・・・それに、仮面ライダー稼業をやってると、自然に鍛えられちまうもんさ・・・。」 「まったく・・・鉄人だな、お前は。」 照井があきれたような声で言う。 「それにしても・・・竜くん、ありがとうね。 翔太郎君と雪華綺晶ちゃんを助けてくれて・・・って、竜くんは雪華綺晶ちゃんが怖いんじゃなかったっけ?」 亜希子が聞く。 「出来た弱点をすぐに克服するのが俺だ。そんなくだらないことで俺に質問するな。」 「何よぉ~、その言い方ぁ!」 「・・・そんなことよりだ。」 照井は亜希子を押しのけると、雪華綺晶の前に立った。 「君に聞きたい。あの少女は君と全くそっくりな容姿・声をしていた・・・いや、もう1人の君と言っても欠損は無いだろう。 あれはいったい何者なんだ?」 『あれは・・・私です。』 雪華綺晶が答える。 「どういうことだ?」 「・・・もしかして!」 突然、亜希子が大声を出すと、フィリップの作業机に置いてあった2冊の本を持ってきた。 「フィリップくん、さっき言ってたでしょ?! 『地球(ほし)の本棚には、本来ひとつの存在につきひとつの本しか無いはずなのに、雪華綺晶ちゃんにはふたつ存在してた』って!!」 「ああ。そして、ひとつ目の本には僕たちの知っている清純な乙女としての雪華綺晶の詳細が、 そしてもうひとつには憎しみや怒りといったマイナス感情に支配された雪華綺晶の詳細が記載されていた。」 「マイナス感情・・・。」 翔太郎の頭をよぎる戦いの記憶。 自身の体を求め、我々に対抗するための力を求める欲望・・・。 自分を震え上がらせた、狂気に満ちた顔・・・。 『あれが本当の私・・・そして、私はあの私の亡霊のようなものです。』 突然、雪華綺晶が口を開く。 「雪華綺晶ちゃんが・・・亡霊?」 亜希子が聞き返す。 そして、雪華綺晶はこの事件の真相を語りだした。 内容はこうであった。 かつて、雪華綺晶は自分の運命を呪っていた。 他のローゼンメイデンと違い実体を持たない彼女は、nのフィールドという無の空間でたった1人で、 しかもローザミスティカという不死の存在によって永遠に過ごさねばならなかった。 そんな地獄のような生活に追い打ちをかけるように、彼女に見えてくる外界で暮らすローゼンメイデンたちの光景、 そして本当なら仲良くしたいはずなのにローゼンメイデンと戦わなくてはいけないというアリスゲームという名の運命・・・。 このふたつによって彼女の精神は崩壊し、彼女は欲望のみを求める狂気の化身へと化してしまった。 だが、一部の良心のみは欲望に支配される前に彼女から分離し、 こうして2人の雪華綺晶・・・つまり、<欲望に支配された雪華綺晶>と<雪華綺晶の良心の化身>と化した訳であった。 「なるほど・・・そういうことだったのか。」 フィリップがつぶやいたその時、照井のビートルフォンの呼び出し音が突然鳴る。 「照井だ。」 『課長!こ・・・こちら、真倉!』 その声の主は、照井の部下である真倉 俊であった。 風都の中心部から離れた場所にあるショッピングモール、アルバトロス・パーク。 いつもは観光客や地元の人でにぎわう風都の観光地なのだが、この日は違っていた。 叫び、逃げ惑う客たち。 彼らの視線の先には、暴れる何者かの姿があった。 「た・・・大変です!アルバトロス・パークに・・・ドーパント出現!!」 『何だと?真倉、映像を送れるか?』 「は・・・はいっ!!」 真倉は自身の携帯電話を持ちかえ、ビデオモードを起動させる。 「これは・・・ロブスター・ドーパント?!」 フィリップが叫ぶ。 確かに、ビートルフォンに映し出された映像にはロブスター・ドーパントが映し出されていた。 だが、その体はWが戦った茶色ではなく、真っ白なものとなっていた。 『私の・・・力・・・。』 「ん?」 映像から聞こえてくる声に耳を傾ける照井。 その声は、先ほど戦ったもう1人の雪華綺晶の声であった。 「真倉!お前の近くに白薔薇のような少女はいるか?!」 『しょ・・・少女ですか?!そんなの探せる状況じゃないですよ! こっちはドーパントが『私の力』がどーしたこーした言いながら暴れてるんですから!!』 「・・・何だと?」 モールのガラスや建物を破壊しながら進むロブスター・ドーパント。 そのロブスター・ドーパントは破壊行動を行ないながら、こうつぶやいていた。 「私の力・・・新しい力・・・アクセルにも・・・Wにも・・・負けない力!!」 アルビノ・ロブスター・ドーパント、正体は破壊されたロブスターのメモリを吸収した<欲望に支配された雪華綺晶>であった。
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レイズソウル(れいずそうる) 概要 レイズソウルとは、味方一人を戦闘不能者を含めて回復する術のこと。 北米版の表記は「Rejuvenate」である。 登場作品 + 目次 グレイセス TOWレディアントマイソロジー3 関連リンク関連技 派生技 ネタ グレイセス 習得者 ソフィ 味方一人を、戦闘不能者を含めてHP30%~回復する気功術。 分類 バースト技再生術 特性 - HIT数 - CC 5 威力 - 詠唱時間(秒) 5.50s 習得条件 称号により習得 称号による強化により最大で以下の付加効果が得られる。・詠唱速度上昇+12%・回復効果+20%・赤チャージ後に発動で、CC分与・HP25%以下 CC1回復 バースト技の一種。ソフィが称号で修得する。 味方1人を戦闘不能者を含めて回復する。 シェリアのレイズデッドに比べて回復性能は低めだが詠唱は速く、危急の蘇生にはうってつけ。 詠唱文 再生を願うは我が真なる祈りなり。光よ形を宿し、具現せよ! 今助ける! ▲ TOWレディアントマイソロジー3 習得者 ソフィ 味方1人を戦闘不能者を含めて回復する。 発動から蘇生まで間があり、その間に全滅すると復活はするが全滅扱いになる。 レイズデッドと違い復活したキャラでも回復するので便利。 ▲ 関連リンク 関連技 レイズデッド レイズウィル 回生功 ▲ 派生技 ▲ ネタ レイズソウルネタ ▲
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光届かぬ闇にて、君の亡骸を抱える。 君の頬は土、気(土とはどんな感触だったか)色に変じ、こわばっても柔らかな曲線を描いていた。 傷から流れていた赤(あ、か。Red? 朱、緋……赤色の)く、冷えるにつれ粘性を増した液体(血)。目覚めぬ君が生きていた証 (ヒトを生かす)。あれにまみれた左手は今も濡れ、失われゆく温もりを訴え続けている(血液だ)。 頬の丸みをかたちづくった肉の上にある瞼は伏せられ、深い影を落とす睫毛は今までに見たことの無い色、をしていた。 そして、あのとき確かに抱えていた身体の重みをなぞるほどに、致命的な寒気が背筋をかすめた。 光届かぬ闇の中で抱えた、華奢な亡骸の重み。その記憶がふいに焦点を失う。 暗がりに抱いた面影。死んだら代わりはいない君と、俺の、記憶の断片をなぞるほどに焦りが胸を衝いてくる。 光届かぬ闇にて、俺が、亡骸を抱えていた君。 きみはいったい、だれなんだ? 息をつくと同時に、青年は瞼を開き覚醒した。 うめきの交じった喉のふるえは、間を置かずくぐもった咳に変わる。 空気の重さと冷たさに加えて、途切れることなく降り続く雨が、彼から体温を奪っていたのだ。 胸に何かつかえている感触もあるのだが、雨垂れを直接身に受けなかったのが不幸中の幸いといえるだろうか。 建築様式が古く、廃墟に近い町並みが眼下に望める場所では、荒野に張り出した建造物の一部が屋根のような役割を果たして いたのだ。石造りの角ばった塔は、知識の無い者から見ても造りがしっかりしていると理解できる。 ゆえに、青年は平然としたそぶりで周囲に目を向けた。 この状況において警戒すべきは、遮蔽物が皆無である周辺の状況だと知っているからだ。 自分がいずこかのエリアを監視する見張り塔のような建物の下層にいると分かったが、そこからどれほどの人員が顔を出すことか。 「トライブに所属し、他の者を倒してニルヴァーナを目指せ……」 トライブ。ニルヴァーナを目指すために組織される集団の総称。 ブルーティッシュ、ハウンズ、ソリッド、メリーベル、エンブリオン、アサインメンツの六強が現存。 ニルヴァーナ。すべてのトライブの長を倒した者が向かうこととなる、カルマ教会より約束された楽園。 カルマ教会。ジャンクヤードの中心、サハスララ・エリアに存在する建物。 ジャンクヤード。サハスララを初めとした七つのエリアに大別。各トライブの者達が戦うためにある―― 「この世界だ」 鮮やかに記憶された情報が嵐のごとく浮かぶ。その波を切って捨てるべく、青年は言い切った。いまだどのトライブの色にも 染められていないスーツのジャケットを開き、湿気にもたついた裾をひとつ払って行動を開始する。 輝かない灰色、水溜りに映る自らの瞳のように、まったき色の無い“Newbie”。ニュービー。 ジャンクヤードの新参者である自分に与えられている時間はさして多くは無いと分かっていたが、腰の両側に取り付けてある ウェストバッグを探る左手が、いやに熱かった。擦過傷すらないそこには異常など欠片もみられないが、シンプルな機構の ハンドガンを携えた右手に添える動作に合わせて、表皮の下にある肉は焼け付くような疼きを訴える。 疑問を覚えて手のひらを眺めるものの、やはり毛細血管にさえ断裂はなく、目に見える打撲等も皆無だ。 仮に内出血を起こすのならこの次の段階であると理解していても、建造物の下層から移動を開始した青年はしきりに左手を 確認していた。屋根から抜け出した裸の手へ、ほのかに白い雨糸がつたう。その細い冷たさが、また熱を際立たせる。 それでも、青年は移動を続けていた。必ずしも様式が歴史どおりであるわけでもない建物のジャンクを抜けるべく、高所に 続く道を探すと同時に身を隠す。非常に矛盾している行動であったが、地上層に出ねばカルマ教会の位置からこのエリアにある トライブの位置を推測することもかなわない。雨雲を貫いて最上階が見えることのない教会ではなく、地上から別のエリアへ 繋がる橋や周辺の地形を見なければ、記憶を“掘り起こす”ことも不可能だ。 色。少なくとも赤はメリーベルのトライブカラーであるはずだが、自分は一体、それをどこで見たのだろう。 石か、あるいは鉄を軸にした様式か。はたまた土か木か。周囲にある建造物は精髄を失ったかのように、ことごとく色が無い。 静謐な表情で座している男の像を横切った瞬間、青年の足が止まった。 「ニュービーに警告する。武装を解除せよ。解除せねば宣戦布告とみなす」 見られていたのだ。 こちらのバッグにも短眼式のスコープは内蔵されていたが、声の主が装備しているそれは両目を完璧に覆う、遮光器に近い タイプであると視認できる。視界を阻害する機構からして、赤外線で看破されたという解釈で間違いない。 姿を見せたのは、男女各一名ずつ。今までの移動から人通りが極端に少ないと分かった場所の哨戒としては十分だった。 雨の中にはしる雷鳴のように、色の無いトライブスーツの各所には明るい……黄色がはしっている。 「質問する。そちらの所属について、解答を願いたい。回答がなければ宣戦布告とみなす」 先ほどの記憶が正しければ、トライブの戦力差は名前を挙げた順だ。 これがエンブリオンやアサインメンツならば弱小と言ってよいが、最大の勢力とされるブルーティッシュや、彼らに対抗する ハウンズのように組織としての形が固まっていれば逃亡もかなうまい。逃亡したところで、後もないだろう。 加えて、掟に従い、ニュービー同士で新たなトライブを築くことが現状で有効だとは、彼には考えられなかった。 ニルヴァーナに向かうことの出来る条件はトライブを築くことでも滅することでもなく、“各トライブの長を倒すこと”。 そうであるなら、アサインメンツのような勢力に限った話でなく、直接頭を取った方がどう考えても効率は良いのだ。 『ブルーティッシュに対抗するハウンズは互角。過日ムラダーラ・エリアを手にしたエンブリオンは、隣接するスワディスターナ を牛耳るアサインメンツとの戦いに明け暮れている。むろん、我がソリッドも、メリーベルの尖兵を相手にしている』 ソリッド。ソリッドの誰から聞いたか分からない知識が、彼にこのような思考を呼んでいた。 どのエリアも膠着状態にあるという現状においてなお掟に固執することへの疑問が、糸のような雨に交じってふと胸に響く。 「我らの所属はソリッドだ。理解したか、ニュービー」 そして思索に沈みかけた青年にとり、女の回答は半端なものであった。 ソリッド。三番目に規模の大きなトライブの詳細は記憶にないが、この地形を見る限り、相手には地の利がある。 ならば打って出るよりも、襲撃に来た相手を迎撃するために守備を固める戦略をとっているとみて間違いない。 篭城のために仕掛けられた罠は敵も味方も区別しないとなれば、その中枢にいるだろうボスの首を単身狙うのは至難であろう。 理解したかとの問いには是を返さざるを得ないが、次につながる選択肢は多くない。 つまり、このままソリッドに従うか。決裂を察知した相手と戦って、死ぬか。 やりづらい状況に陥っていることを自覚した青年は、どうも及び腰になっている男女の姿を改めて見据えた。 女がライフルを構えているなら、男の方は連射も掃射も利くサブマシンガンを所持している。運良く狙撃を避けたとしても 逃げ場は無い。男の方を初手で無力化すれば切り抜けられる目も出るだろうが、ハンドガンのみで戦うには分が悪すぎた。 『だが、ここで戦って何の利がある』 左手の感覚に対する生理的な嫌悪から、青年は眉根を寄せつつ銃を手放した。タグリング。カルマ教会に個人の戦績とコードを 証明する指輪を首に下げていたことを思い出したが、対策を立てようにも今となっては遅すぎる。 遅、すぎる。遅すぎる、遅すぎる、遅すぎる。何が遅いのだ。何をするには遅いというのだ。理解できない。 何に対してか判別出来ない心拍数の上昇が、その手のひらで感じられた。 「……了解した」 判別不能と分かりきった事象を隅に追いやり、青年は口を開く。額を出してかきあげ、側頭部に流していた髪が雨に濡れて べっとりと張り付く、その感触が、やはり“記憶”には無い何かとよく似ていた。 脳裏でざわつくノイズに相対した喉もとがむかついてならない。 「ソリッドに告げる。俺は」 ただ、生きねばならないことは明白だった。 自身の現時点における生存がかなわなければ、トライブを制覇するなど夢のまた夢だ。 ニルヴァーナにせよ左手の違和感にせよ自分は何も知らないが、知らないまま死ぬよりは知ってから死ぬ方がよほど良い。 雨に濡れた左手を強く握ると、妙にぬるついていた。一条の光すら届かぬ場所、行った事も見た事も……ある記憶が胸を衝く。 闇の中で彼女が、かけがえのない者がすでに死んでしまったというのなら。 そうだ。あの赤い色。メリーベルの色だという生命の海のなかで、自分はすでに―― 「俺は……俺達に、帰る場所は無い……」 だからこそ、平板な声を綾なしていた青年は思い出していた。 左手の平を“指向性のある緩やかな光の糸”から胴をかばおうと突き出し、もろともに貫かれてしまった瞬間を。 X。円形のうちに複雑な意匠が各所に現れている建築からはかけ離れた文化に存在したと覚えている、22番目の文字。 カイと読むそれが円を貫き、底部に大口を開けている。それが左手にあった事実が、初めて青年の意識に浮かび上がった。 一体それは、いつからか。灰が凝り固まったようなトライブスーツよりも明度・彩度がともに低く、今までに見たことの無い 色が青年の鼓動を激しいものとしていく。ソリッドの構成員どもがなにごとか口にする様子さえ、ひどく遠い。 ――Om Mani Padome Hm―― ああ、蓮華の中なる宝珠よ、永遠なれ。 覚えのある文字列が明確なヴィジョンをなし、青年の脳へと強制的に挿入される。 その痛みが少し前と同じように、胸に飢えて渇いた衝動を呼び起こし、彼から恐怖心を奪った。 かたちをなさないうめき声を噛み締める青年の足が一歩、ふたりへ近づく。近づけば、ふたりは明らかに退く。 押せば退く。押すから退く。押さずとも退く。それを確認するまでに、幾度続けたことか。 稚拙もきわまった追撃でさえない移動の中で、血色を取り戻した青年の口角が引き締まった。 歯がゆさに奥歯を噛み締めたのだと、今なら理解できる。 こちらより人数の面でも武装の面でも有利を保っていながら、たったひとりのニュービーへ立ち向かおうとしない相手に。 戦う手段を。力を持っていながら、ただ逃げ惑うだけの者達に。 自分は、苛立っているのだと。 「帰る場所を探したければ、戦う以外に道は無い!」 それに気付き、目を見開いて叫んだのか。 あるいは叫んだ瞬間にこそ、気付きがあったのか。 ただ、色の無い瞳に灰色がかった紫がともった瞬間に、青年はおのが叫びへ明らかな抑揚を加えていた。 よくとおるにも関わらず、どこか陰に篭った響きには迷いなど欠片も無い反面、すさまじいほどの怒りがある。 『戦え……そして勝ち続ければ、きっとその答えが分かる』 主の分からない呼びかけに応えるように、彼の体に紫の線条がはしった。幾筋にも重なり合ったそれは体の各所で節をつくり、 六角形の面と変わって、彼の体を彼でありながら彼ではないものに置き換えていく。 凝り固まった面によって胸に肉付けがなされ、両肩が張って騎士のような胸当てが構成される。体にぴったりと張り付いた スーツの腹には、ウェストバッグの代わりにベルトが巻かれた。バッグのあった部分には十字をなした銃と、方形のナックルが それぞれ提げられている。頭部に構成されたヘルメットの視線は紫色をした円形のバイザーで隠され、相手にそれを見抜かせない。 最後に。バイザーはソリッドのトライブカラーと同系の黄色で縁取られ、同じ色をしたXの紋章に大きく断ち切られた。 「やはり、この男」 女が不自然に声を途切れさせたのは、耳をつんざくような雄叫びが相手から発されたためである。 少し前に彼女たちの仲間が四散するさまを作り出した青年の、仮面の下で放たれた咆哮はあまりに歪んで、彼からかけ離れている のか彼そのものを顕しているのか判然としない。判然とさせる意識すら、その瞬間の彼は持ち得なかった。 むろん、先刻の彼と同じ灰色の瞳をしているソリッドの面々に、ノイズを類推できる能力などない。 ――em all eat them all eat them all eat them all eat them all eat them all eat them all eat them all eat th―― 喰らい尽くせ、Kaixa。 直接脳に響いてくる声だけが、彼の耳朶を打つ。 繰り返される情報を肯定した青年――カイザは右腰に携える銃を抜き放った。自らの手と一体化したかのような得物を握る手を 無造作に伸ばし、その射線上にある女へ引き金を引く。一発、二発、三発目を数えるまでもなく、彼女はくずおれた。 流れ出る血は赤い。カイザの記憶どおりに、赤かった。 「これ、は……やめろ、やめてくれ、ディアナぁああああア!!」 女の名前か、なにかか。あっけらかんとさえしていた呟きから一転した絶叫と同時に、マシンガンを構えていた男の瞳にも髪の 色と同じ赤がともった。カイザのそれと質を同じくした紫の線条が彼の体を包み込み、局所的なセルの表出が全身に及ぶ。 男に起こった変化を、カイザはベルトの後部に現出した双眼鏡、最後に構成された道具でもって確認していた。 倍率を変更するとともに、変化しつつある対象の詳細な情報が青年に伝達される。 ヨモツイクサ。妻を黄泉路より連れ出さんとした男に従った参謀であるところの、槍持てる屍。ヒトとしての姿を無くした相手の 有する強みと弱点が無機質な情報としてカイザの脳裡に並び、その情報どおりに、彼は槍をひとつ回して横に構えた。 なんらかの意志が相手のもとに収束したのと時を同じくして、双眼鏡をしまった青年の立つ地面が変質する。足許からこぶし大 ほどもある石のつぶてが持ち上がり、膝丈のブーツに覆われた彼の脛を、腿を腹を打ち据えるべく飛びかかってきたのだ。 その原理に思いを馳せている暇を捨てても避けきることがかなわず、攻撃に移さんとしていた青年の体勢が崩れるが―― 軸足でその場に踏みとどまりつつ、ベルトの要にある通信機器から抜き取ったカードを銃の底部に差し込む。 ――Ready―― 原理が分からないままに手を伸ばしたが、手にする前から結果は体が覚えていた。 銃底から伸びた光輝の刃が、雨を弾いて大気を乾いたものに変えていく。これはブレイガン。カイザの、灼熱を生み出す銃。 無意識下に存在する情報に従って、青年は手首を返す。切り込む勢いを利用してヨモツイクサの槍を下から上へ薙ぎ、間合いを 離すが早いか銃の機構を操作し、闇を掃い対象を拘束する光の銃弾を、正確に相手の懐へと打ち込んだ。 あの光の糸よりも手荒に動作を奪われたヨモツイクサは、男であった頃には欠片も無かった獣性をあらわに叫ぶ。 ――EXCEED CHARGE―― トライブを構成する人員である彼に、突如として生まれた生への撞着。 それを無慈悲に切って捨てたのは、カイザのベルトが発する電子音だった。 「お前達の仲間は、言ったはずだ。ボスの代わりはいないが、兵隊だったら捨てるほどいるんだろ? 良くないなあ……前言を、撤回するのは」 叫びによって激情を振り払ったのか、マスクに隠されてなお鮮明な青年の声は、そんな男の意志をあざける。怯えて首を振ろう にも、それすら出来ない相手を前に、カイザブレイガンを構えた彼はその身を光の矢と変え、ヨモツイクサの懐深くへ切り込んだ。 そして、接敵の瞬間。男たちの輪郭に、明らかな乱れが生じた。 ヨモツイクサを構成する微細な六角形が霧消したかと思えば、その背後にカイザの姿が現れる。ひとつ呼吸をする間、静けさが 場を支配し――円錐状の帽子に隠れた男の口から苦鳴が漏れるが早いか、彼の体は根本から消えうせた。斬撃によって空間へと 刻まれたカイの文字も、男の体が崩壊するとともに輝きを失って、世界の輪郭をぼかすかのような雨に解けていく。 収束した戦いをよそに、きびすを返した青年は灰色の地面を踏みしめ、女の死体へ足を伸ばした。 相対的な気温の低さに湯気を立てるモノにある、赤い、生命の流体にも似た力が、しっかりと開いた左手から吸い取られる。 飢えが充たされる感覚に虚無と紙一重の昂揚を覚えながら、カイザは覚えたことに違和感を感じる。違和感を感じたこと自体に 違和感を覚え、雪だるま状にふくらむ思いに覚えたズレは、その思考をひとつひとつ鮮明なものと組み変えていく。 そして、彼は左手を眺め、ヒトとしての姿に戻るべく意識を集中した。 白く小さなセルの嵐がその身を包み込み、左手のひらに刻まれた真に色の無いあざが、確かに視界へと入る。 その左手が誰を抱えていたのかも、ニルヴァーナが何なのかも分からないままだが、はっきりした理由と、事実は見つけた。 「俺は、戦う。生きて……戦う」 理性の光さえ宿って涼しげであった双眸に、明らかな闘志が宿る。 この自分には、知らなければならないことがある。自分には相手を倒す、力がある。 だからこそ上を。地上を目指して、青年は移動を再開した。戦った先に真実があるというのなら、すでに失われたぬくもりの ルーツが理解できるのなら、時間を無駄に使ってなどいられない。痛む下肢の治療はソリッドの縄張りを抜けてからだ。 目指すは、ブルーティッシュ。あるいはハウンズ。組織として強大かつ安定しているからこそ、奴等には新入りを受け入れる だけの余裕もあるだろう。いずれかに味方するような立ち位置が築ければ、第一印象はけして悪いものになどならない。 こちらに悪い印象を抱いた相手は邪魔なだけだ。そのときはこの女と同じに喰らい、自らの糧にしてやればいい。 口許をほころばせることもなく、ただ喉をふるわせるだけの笑みが、青年の顔に刻まれた。 しかし、それは控えめな微笑で留まることなく、深く眉間に刻まれた皺は彼の顔をヒトでない何者かのように歪めていく。 頭部を除けば、唯一スーツに包まれていない彼の手。あざのない右手には、男の所持していたサブマシンガンが握られていた。
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岩肌が剥き出しになった地面に、風が吹いて砂埃が舞った。 遠くで機械が稼働する音が響いて僅かに地面が振動する。 晴れ上がった青い空の下、幼い兄妹のカルロとアロエは競争していた。 「待ってよ―、お兄ちゃん」 「ダメー」 ハハ、と兄である少年は活発な瞳を輝かせて答えた。 上下に青いジャケットズボンを着こなし、黒髪から汗が飛びる。 対して妹の方は眉を八の字にしかめ、息を切らせながら兄を追っている。 桃色のワンピースの裾と茶色の長髪が風でなびいている。どちらも八~十歳といったところか。 「ここに入っちゃ駄目だって、オジちゃんがいっていたじゃない」 「弱虫アロエ―。俺はオジちゃんなんて怖くないもんねー」 舌を突き出し、べぇーとアロエに告げてカルロは走る。 兄妹が訪れた鉱山は『幽霊鉱山』と呼ばれ、イレギュラーが跋扈する山だったのだ。 そう、一年前までは。カルロが首をあげて鉱山を見上げると、足が道を踏み外す。 「うわっ!」 「お兄ちゃん!!」 カルロは両腕をバタバタさせながら身体のバランスを取ろうとするが、無駄だった。 段差の激しい崖下へカルロの小さな身体が乗り出した。アロエが両手で顔を覆う。 落下する感覚にカルロは身を任せ、両目をつぶった瞬間背中に硬い感触が訪れた。 浮遊感とともに目を開くと、カルロを抱えて跳躍するアルマジロ型のレプリロイドがいた。 地面に着地するアルマジロ型のレプリロイドがジロリとカルロを睨む。 ウッ、と言葉を失っているカルロをよそに、アロエが嬉しそうに彼の名を呼んだ。 「スティールオジちゃん!」 「カルロ殿、アロエ殿、ここは危ないから入ってこないように言ったでござろう」 怒ったように告げるスティールエッジに、カルロは気まずそうに笑みを浮かべた。 笑ってごまかそうとしているのだが、目の前の尊敬する男には通じない。 スティールエッジの厳しくありながらも、優しさを秘めた黒眼を動かずに見つめていた。 「まったく、二人ともなんど申したと考えているでござるか?」 カルロたち兄妹に延々と説教をしながらスティールエッジは大通りを進む。 白銀のボディにイエローの線が入っている、非人型のフォルスロイドであるスティールエッジは目立ってしょうがない。 幼い兄弟たちの手をつないで歩く光景は一種異様であるが、騒ぎ立てるものはいない。 それどころか…………。 「よう、スティールエッジ。カルロまた幽霊鉱山にいっていたのか。お前のカアちゃん探していたぜ」 「やあ、スティールさん。今度ご馳走してくれたお茶のお礼をしたいのだが今暇かね? 仕事中? それは残念」 「おう、スティール! 今度の休みに力を貸してくれよ。力が強いヤツが必要なんだ。前みたいな喧嘩じゃないって」 むしろスティールエッジは慕われていた。思わずため息をつくが、スティールエッジの表情は柔らかい。 一人一人街の住民たちに丁寧に返しながら、兄妹の家へ歩みを再開した。 ここに来て一年。ここまで馴染むことになるとはスティールエッジ自身も思っていなかった。 スティールエッジは一年前の光景を思い出していた。 □ 最初に浮かんだ感想は、なんとも活気のない街だろうというものであった。 表通りにヒトの姿はなく、からっ風が埃を舞い散らしていた。 カラカラ、となる風見鶏がよけい街の侘しさを強調している。 スティールエッジはその原因である鉱山に一度視線を向けて、市長との待ち合わせをした建物へ入っていった。 アポを取っていたスティールエッジは応接間に案内され、十分ほど待たされた。 入ってきたそこそこに恰幅のいい中年が入ってくる。目には疲れが見えていた。 その男性にスティールエッジは直接用件を切り出す。 「この街には危険なものが埋まっている。是非とも、拙者にあの鉱山を任せていただきたい」 ちなみにこの用件、“あの男”の身分の一つを使って話を設けている。 ダブルホーンたちのように、現場近くのヒトビトに黙って作業を続けても文句はいわれはしない。 ただ、スティールエッジというフォルスロイドはどこまでも生真面目であった。 「その件についてはお任せいたします」 「かたじけない」 ゆえにあっさりと話が終わり応接間をでる。すると、ドアを開けた瞬間なにかが飛来してくるのをスティールエッジは目撃した。 手の平で受け止めると、視線の先には敵意を向けている少年がいる。 黒髪の活発そうな少年が空き缶を投げてきたらしい。 「こら、カルロ! お客さんになんてことを……」 「父さん、騙されるな! きっとこいつ、悪いヤツだ!!」 少年が叫ぶのを聞き、スティールエッジはキョトンとする。 “あの男”の目的から考えれば、少年のいっていることはあながち間違いではない。 「カル……」 「いや、構わないでござるよ」 スティールエッジは怒鳴りつけようとする市長を止めて、カルロと呼ばれた少年の前に膝を折る。 敵意に満ちた視線に微笑んだ表情のまま顔を合わせた。 「カルロ殿、この街は好きでござるか?」 「当たり前だろ! 最近イレギュラーが増えてこの街にみんなが寄り付かなくなった、っていっているけど絶対前みたいな街に戻る! お前なんかの好きにはさせないぞ!」 「そうでござるか」 カルロの言葉を受け止め、スティールエッジは頷いて立ち上がった。 少年の視線を背中で受け止めながらも、スティールエッジは止まらない。 道中、市長が声をかけてくる。 「申し訳ありません! カルロにはきつくいっておきますので……」 「それよりも市長、最近イレギュラーが増えたというのは本当でござるか?」 「……はい。ガーディアンやセルパンカンパニーに救援を求めようにも、通路をすべて無差別に襲いかかるイレギュラーにふせがれまして……」 ふむ、とスティールエッジは顎に手をやり、市長の瞳を覗き込む。 市長が不安げな表情をしているよそで、スティールエッジは破顔した。 「ならば、一週間以内に拙者がそのイレギュラーを整理してみせよう」 イレギュラーを一掃する。 スティールエッジがそう申し出たのはその場の思いつき、といってよかった。 スティールエッジはこの時点では生まれて間もなかった。 モデルHたちを積んだハイボルトらとは違い、モデル∨の欠片を動力源にした試作型である。 フォルスロイドは新しい技術であるため、改造されたハイボルトたちとは違い、スティールエッジは一から生まれた存在だ。 ゆえに知識と力はともかく、経験はなかった。スティールエッジは自分の行動が情というものからくるものだと、この時点では知らなかったのである。 「スティールエッジさん、イレギュラーの一掃をありがとうございました!」 「いや、市長。まだイレギュラーが固まる場所があるでござる。それに自分たちの任務を遂行するためでもあるから、お互い様でござる」 スティールエッジは機嫌のいい市長に答えながらも、内心冷ややかであった。 イレギュラーの大量発生は幽霊鉱山と俗称される山に、三つのモデル∨が埋まっているのが原因である。 スティールエッジが“あの男”の技術を使ってモデル∨の稼働を抑え、その間にイレギュラーを一掃しただけだ。 マッチポンプ、ともしも事情を知る者が存在すればそう後ろ指を指されてもしかたない。 ゆえにスティールエッジの心の中が晴れることはなかった。 「カルロ殿は元気でござるか?」 「ええ、あいつも活気が戻ってきた街にたいへん喜んでいます」 「それはよかった」 そう、スティールエッジの心は曇ったままだが、カルロが喜んでいるという言葉に少しだけ救われたような気がした。 そして市長とともに周囲を確かめようとしたとき、入ってきた女性からカルロたちがいなくなったと告げられた。 「絶対突き止めてやる!」 「危ないよ、お兄ちゃん」 小柄な身体を駆使して、誰にも悟られず幽霊鉱山に入ったカルロは指を立てて妹を注意する。 アロエは思わず口つぐんだが、相変わらず兄を咎めるような視線だ。 「アロエもあいつはおかしいと思うだろ。あんな姿をしているうえ、こんなところに用事があるなんて絶対裏がある。兄ちゃんを信じろ!」 一面では真実を捉えている言葉をカルロは告げて岩肌を登っていく。 途中警戒に当たっているメカニロイドをごまかしながら、発達した運動神経を駆使して進んだ。 ふと、カルロが後ろを振り返るとアロエが息を切らせながら追ってくる。 邪魔だからついてくるな、といっても聞きはしない。カルロはため息をついて岩に座り、妹を待つことにした。 すると、パラパラと細かい石がカルロに降りかかってきた。 鬱陶しげに腕で払いながら、妹を見るとカルロの後ろに視線を向けて口をパクパクさせていた。 驚いた表情に、相変わらず怖がりだと感想を抱きながらカルロは後ろを向く。 瞬間、カルロの表情が固まった。 全身が紫色の、体長十数メートルはある巨大なクモ型メカニロイドがカルロの頭上に存在している。 モデル∨の力を取り込んだスパイダリルの進化型のメカニロイドであった。 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」 カルロがたまらず叫んで目をつぶった。アロエが「お兄ちゃん!」と叫ぶ声が耳に入るが、スパイダリル・ネオは止まらない。 八本あるうちの右前方に存在する脚を動かし、カルロを狙って貫こうとする。 カルロが身体を動かすまもなく、巨大な脚は振り下ろされた。 「お兄ちゃん!!」 アロエの悲痛な叫びが山に響く。スパイダリル・ネオの力によって地面が振動した。 兄は助からないのか。ペタリ、と両足をついた幼い少女は巻き起こる煙を虚しく見つめていた。 そのアロエの予想とは違い、カルロは生きて尻餅をついている。 スパイダリル・ネオの前脚を、刀で受け止める存在がいたのだ。 粉塵の舞い上がるなかで白銀の装甲が映えていた。 背や腕、脚を縁取る黄のラインが太陽光を反射する。 刀を持ってスパイダリル・ネオの脚を受け止めたのは、アルマジロの姿をしたフォルスロイド・スティールエッジであった。 スゥー、と息を大きく吸い込み、目を見開いてスティールエッジの怒声がスパイダリル・ネオを貫く。 「ハァッ!!」 スティールエッジがもつ日本刀が、蜘蛛の足を一本斬り飛ばす。 スパイダリル・ネオがバランスを崩して倒れ、スティールエッジはカルロを抱えてアロエの傍に着地した。 カルロをおろし、アロエを見るスティールエッジの瞳をアロエは覗き込む。 きっと怒っている。アロエはそう思ったが、スティールエッジの瞳は違った。 「無事でよかった……」 心底安堵した声色と、優しい表情をみてアロエは確信する。 このヒトはいいヒトだ。 アロエがそう思っていると知らず、スティールエッジは後ろをみて二人をいきなり抱え込んだ。 数瞬後、スティールエッジの背中の丸い装甲が爆ぜる。 火薬の臭いがアロエの鼻腔に届き、スティールエッジは顔を顰めて痛みに耐えていた。 「なにしてんだよ、あんた!」 カルロが取り乱したように問うが、スティールエッジはより二人を引き寄せるだけ。 さらに数回スティールエッジの背中で爆発音が響くが、彼は一歩も退かない。 「やめろよ、お前が傷つくだけじゃないか!」 「カルロ殿……君の言う通りでござる。あれは拙者の上司の仕業でああなった。 これだけでは償いにもならない……だけど、二人の命だけは守り通す!」 スティールエッジの宣言とともに、彼のもつ刀が電撃を帯びる。 スティールエッジが身体を回し、アロエとカルロに光線が当たらないように胸で受けながら刀を構えた。 全身を撃たれながらもスティールエッジは微動だせず、刀を頭部へと運んだ。 「ハァッ!!」 空気を吐き出すと同時に刀を袈裟斬りに振り下す。 電撃が鋭さを増して斬撃となり、光線ごとスパイダリル・ネオを縦に斬り裂いた。 沈黙したスパイダリル・ネオを前に、爆発が巻き起こる。 その凄さを前にしたアロエは言葉を失っている。カルロも同様だ。 スティールエッジは振り向いて、よく見ると傷だらけの顔のまま尋ねてきた。 「二人とも、怪我はござらんか?」 どこまでも穏やかで優しい言葉。 アロエは溜まらず、安心して泣き出してしまった。 この後、二人を市長夫妻のもとへ送り届けて温かく迎えられる。 言い出しっぺのカルロはもちろん両親に説教されたらしい。 この事件を通して、二人だけでなく街の住民たちと交流をもつようになる。 カルロとアロエの兄妹は特に懐いてくれた。 僅かな罪悪感を持っていたが、スティールエッジにとっては幸せな一年だった。 □ 天道総司は買い物袋をぶら下げながら、待機させていた赤いバイクへと視線を向けた。 人通りの少ない道路で異質な雰囲気を漂わせる自車を見つめ、思わずため息をつく。 買い物袋を後部座席に収めながら、天道は訊ねた。 「なんの用だ? 紅渡」 「今日は個人的に訪ねたいことがあったのできました」 世界とやらに付き合うつもりはない、と天道は思考する。 天道の守るべき世界は普通に暮らして普通に笑うヒトビトがいる日常だ。 ディケイドとやらを始末することで、自己を守ろうとする手前勝手な『世界』とやらではない。 「『世界』とやらの計画を俺に実行させたいというなら無駄だ」 「そうではありません。アナタはこのままでは消えてしまいますよ」 「それがお前に関係あるのか? ディケイドとやら以外に」 「僕にはなくても、アナタのことを大切に想っているヒトたちにはあるに決まっているじゃないですか!」 語気を荒くし、視線に怒りを込めた渡を見つめて天道は少し驚いた。 始めて渡という人間の感情を見た気がする。 もっとも、基本的に天道と接するときの渡は、ボロを出さないように必死なだけだったのだが。 その仮面を脱ぎ捨てて、人間とファンガイアを共存させて兄を守った心優しき青年は心の中を明かす。 「このまま消えてしまっては、アナタのことを慕っているエールさんや、ガーディアンのヒトたちがかわいそうだ。 ディケイドなんて僕もどうだって……よくはないけど。アナタの場合はその前にすべきことがある。それを放り出すのは許せない」 だから決着をつけろ。渡の瞳はそういっていた。 なんのことはない。紅渡という青年はお人好しなのである。 天道はここまで言われて始めて気づいた。加賀美のような馬鹿だ、と天道の表情が力を抜く。 「……大丈夫だ。ちゃんとあいつらとの別れは告げる」 「別れ? ここにいることだって……」 「それは無理だ。俺は世界を破壊した。これを見ろ」 天道がグローブを脱ぐと、粒子が手から昇っていた。 渡が天道の手を見ると悲痛な表情をしている。天道の様子に心を痛めているのだろう。 「気にするな。こうなるのは覚悟の上だ」 「諦めないでください。きっと手が……」 「大丈夫だ。俺は自分の不始末を片付けるまではもつ。それよりも渡、すまない」 天道の謝罪に渡が「え?」と疑問を口にする。この謝罪は渡に対して冷酷な相手だと考えたことによるものだ。 渡が心配しているのは世界よりも、天道がここで作った仲間のこと。それがとても嬉しかった。 「それに、頼みがある。いいか?」 「僕に出来ることでしたら」 そう言われ、思わず天道は「お人好しめ」とつぶやく。 渡が鼻白んでいたが、天道の言葉に嫌な響きはなかった。 天道が渡へと向き、自分の望みを告げ始めた。 ドクターCLとの出会いから一週間は経っていた。 あれからプレリーに変化があったかと問われれば、より精力的に仕事に取り組むようになった、と周囲は口を揃えるだろう。 周りはいつものプレリーよりも気合が入っていると考えているが、事情を知るものはそうはいかない。 ガーディアンベースの廊下にて、ストローから飲み物を飲んでいるエールも事情を知る者の一人だった。 「プレリー、身体を壊さないといいんだけどな……」 「プレリー様がどうしたって?」 エールは横から声をかけられ、ギョッとして振り向いた。 そこには金髪のクールな青年、アランが立っている。彼はエールと同じく、訓練を終えたばかりのようだ。 「また厄介ごとか?」 「えーと……そのー……」 エールらしくない不明瞭な態度に、アランは納得がいったように数度頷いた。 エールの傍を離れながら会話を続ける。 「また話せないような事情があるのか。いいぜ、話せるようになってからで」 「うん、ありがとう。アラン」 「いいっこなしだ」 そういって出て行くアランの背中に拝み倒し、感謝を示す。 初代司令官が擬態されただけならともかく、精神もそのままに敵として存在する。 それはガーディアンのメンバーたちにとって衝撃的な真実にほかならない。 そう判断したプレリーとフルーブによって、ドクターCLの存在は伏せられることになった。 「なんだかなー」 納得いかないのはエールである。理屈ではわかるのだが、どこか引っかかりがあったのだ。 自分が入院した理由を伏せられたときも、周りは同じことを思っていたのだろうか。 『まあまあ。こればかりはみんなを混乱させるだけだからね』 「それはわかっているけどさ。ところで、モデルZは」 『しばらくの間そっとしておこう。彼は特に彼女へ思い入れが大きかったから』 そうか、とエールは沈黙している赤いライブメタルへ想いを馳せる。 彼には彼の事情もある。エールは天井をみて、もやもやした気持ちを抱えていた。 プレリーはモニターを見つめて眉をしかめていた。 金色の髪が後ろに流れる赤い船長服のガーディアンの二代目司令官は、自身の姉を擬態したワームとの出来事を胸の底に押し込んで、仕事に没頭していた。 少なくとも忙しい間は嫌なことは忘れられる。プレリーは新しいモデル∨の反応のグラフとイレギュラーの事件がまとめられたファイルを開く。 めぼしいところは今まで探索してきた。天道とエールの活躍もあり、候補地も減っている。 「後はここよね……」 プレリーはある一エリアへ視線を向けて嘆息した。グラフが示すモデル∨の反応は異常なのだ。 複数機のモデル∨が埋まっている可能性が高い。なのに今まで放置していたのは、イレギュラーの発生報告が一度もなかったからだ。 モデル∨の反応を見つけたときは驚いたのだが、街へ調査員を向かわせるとなにもつかめず帰ってくる。 (これ以上は実際向かってみるしかないか……) プレリーはそう考えて現場に赴くことを決めた。 オペレーターに天道とエールを呼んでくれるよう頼み、プレリーは頭に勝手にわいてくるドクターCLの姿と言葉を頭を振って追い払った。 □ 「それで、本当にここにモデル∨の反応があったのか?」 「ええ、間違いはない……はずです」 天道が周囲の穏やかな光景に尋ねると、プレリーが自信なさそうに頷いた。 今までは市長に調査の申し入れを提案してきたのだが、平和な街だといわれやんわりと断られていた。 ならば、あまり正体の知られていないガーディアンの司令官であるプレリーと天道、そしてエールが調査も兼ねてやってきたのだ。 服装もガーディアンの証であるものはすべて外しているため、観光客にしか見えない。 もっとも、プレリーの同行は半ば彼女のわがままでもあったのだが。 「天道、プレリー。ジュース買ってきたよ」 「ありがとう、エール」 頼んではいないのだが、こういう気遣いができるのはエールのいいところだ。 天道はそう思い、ジュースを受け取りながらプレリーを横目で見た。 食生活は天道のおかげでよくなっているのだが、明らかに寝不足とわかるほど自分を追い詰めている。 ちなみに食生活に天道が口酸っぱく干渉してきたため、若いメンバーには煙たがれているが、フルーブなどは感謝をしてくれていた。 まあ、それはさておき。天道は確かに妙だと思う。 この街の中央に存在する鉱山はただならぬ雰囲気をまとっている。 なのにここに居るヒトたちはとても平和に過ごしていた。 それはいいことなのだ。特に天道が口を出す必要もないだろう。 「ここは外れではないのか?」 「……まだわかりません。もう少し調べてみましょう」 プレリーの表情が曇る。彼女がドクターCLのことを考えているのは一目同然。 もともとオーバーワーク気味だったのだが、彼女の姉に擬態したワームと出会ってからは特に酷い。 睡眠時間を削っているようだが、他人がいっても聞かないだろう。どこかで緊張の糸が切れて痛い目をみなければいいのだが。 「そっか、じゃあプレリー、アタシと一緒に行こう」 「エール、これは……」 「わかっているって、調査でしょ? 天道、そっちは任せていいかな?」 エールが尋ねてくるが、天道の答えは決まっている。プレリーを気遣っての行動だ。 天道は「任せろ」と告げて、エールがプレリーを引っ張っていく。 天道は一人静かに踵を返した。 う~ん、と声が漏れながらエールは背を伸ばす。 日差しが温かく、活気が溢れる街のヒトビトの声が聞こえてくる。 平和で穏やかな街だ。エールはプレリーには悪いが、ここで見つかったモデル∨の反応が外れであって欲しいと願っていた。 戦闘になれば巻き込まれるのは力のない彼らだ。 十一年前のイレギュラーの起こした災害に巻き込まれた過去を持つエールとしては、それだけは避けたい。 守るための力を求めたといっても、エールはもともと平和を愛する少女だ。 争わないですむならその方がいい、とつねづね考えていた。 ベンチに座るプレリーに近づき、なにもないね、と話しかける。 「そうね……本当に平和で……。街の調査は今日で切り上げて、明日は鉱山に向かってみましょう」 「うん。けどまあ、こっそりいかないとね。ついてこれる?」 「エール。私はこう見えても、ガーディアンの司令官ですからね」 プレリーがクスリ、と笑ってエールに返事する。ようやくプレリーが笑った、とエールは喜んだ。 プレリーは可愛いのだから、もっと笑えばいいのにとエールはつねづね考えている。 とはいえ、姉に擬態したワームと出会えばそんな余裕もなくなるのが普通だとは思うのだが。 二人が和んでいると、道路の一角が騒がしくなる。なんだろうか、とエールたちが視線を向けた。 エールは映った光景に唖然として、ライブメタルを掴んで地面を蹴った。 「みんな、そこをどいて! ダブルロックオン!」 エールが叫び、赤い装甲をまとうロックマンゼクスへと変身を終えて跳躍する。 人だかりの中央、白い装甲のアルマジロ姿のフォルスロイドへと剣先を向けた。 「アナタ……プロメテたちの仲間のフォルスロイドね!」 「いかにも。そなたは……」 フォルスロイドが口を開く前に、エールに対してブーイングが発せられる。 唖然としているエールへと、次々ヒトビトが文句をいってきた。 「アンタ、いきなり現れてなんだ! 危ないじゃないか!」 「スティールさんにそんなものを向けて、何様のつもりだい!」 などと非難がエールへ向けられる。始ての出来事にエールが戸惑っていると、スゥーッとフォルスロイドが息を吸った。 「喝(カッ)!!」 極大なフォルスロイドの声量にエールだけではなく、周囲のヒトビトも耳の機能が麻痺をする。 コホン、とフォルスロイドが咳払いを一つして、周囲を見渡した。 キーンと鳴る耳を抑えながら、エールはフォルスロイドを睨みつける。 対して、フォルスロイドの方は平然としていた。 「皆さん、彼女は拙者の客でござる。暴言は謹んでいただけぬか?」 そうフォルスロイドが宣言すると、周囲のヒトビトは戸惑いながらフォルスロイドとエールを交互に見ている。 なにがなんだかわからないエールに、聞き覚えのある声が届いた。 「エール、変身を解け。そいつはここのヒトたちを巻き込むような真似はしない」 「天道……?」 エールが疑問符を浮かべながら振り向くと、堂々と近寄ってくる天道総司がいた。 彼がエールの傍に立ったとき、エールは忠告に従って変身を解除する。 「わざわざ足を運んでいただき感謝いたす。拙者はモデル∨搭載型試作フォルスロイドが一体、スティールエッジ・ザ・アルマジロイド。 エール殿、天道殿、そなたらの武勇伝は聞き及んでいる。ひとまず、拙者の基地へきていただけないでござるか?」 スティールエッジの提案に天道が迷わず同意している。 相変わらず罠に飛び込むのを迷わない性格だ。呆れつつも、エールは後をついていく決意をする。 エールはこのとき避難してもらおうと思っていたプレリーが、ついてくる気であったことに気づいていなかった。 フォルスロイドの部屋と聞かされていたゆえ、どこか偏った部屋なのかと思っていたがそうでもなかった。 エールたちが通された部屋は畳が敷かれ木板でできた壁の、飾り気のない質素な和室であった。 通された部屋にて三つの座布団が敷かれ、その上にエールたちは座っていた。 エールとプレリーは始めての和室で足を崩していたが、天道は慣れているのかピシッ、と背を伸ばして正座していた。 そのエールらに、お茶を配ってスティールエッジが対峙する。 なにを企んでいるのだろうかとエールは警戒していると、天道とプレリーがお茶に口を出した。 「って、あんたらはもうちょっと警戒しなさいよ! 毒が入っていたらどうするの!!」 「ご、ごめんなさい、エール。つい、喉がかわいちゃって……」 「落ち着け、エール。なにか仕掛けるつもりならとっくにやっている。ふむ、いい茶葉を使っているな」 「拙者の趣味で取り寄せてもらっているのでござる」 「茶の温度も高すぎず低すぎず。茶葉のうま味を引き出している。けっこうなお点前だ」 「褒めていただけるとは……感謝いたす」 スティールエッジが礼を告げるのを横目に、エールは変な雰囲気に置いてきぼりを食らわされた。 たまらず、エールは核心に迫った。もともと細かいことは苦手であったのもあるが、現状はとても不可解なのだ。 「それで、アタシたちをここに呼んでいったいなんの用?」 「……それは私も聞きたい……」 突如聞こえた、知っている声にエールが思わず立ち上がって振り向いた。 そこには白いアーマーに横に広いヘルメットを装着した、砂時計型の女性らしいラインを持つ敵がそこにいた。 エールは思わずその名を呼ぶ。 「パンドラ!? アナタ……どうしてここに? ううん、それはどうでもいい。モデルHたちの居場所を吐いてもらう!」 「そういわれても……もう私たちの手元にはない……。彼らは新しい適格者の……もと……」 エールが思わずライブメタルを掴んで構えようとするが、天道が手を掴んで制止する。 スティールエッジもパンドラ相手に首を振り、パンドラはそれに従って杖を収めた。 「スティールエッジにここで戦うつもりはない。その意志に従ってやるべきだ」 「つくづくかたじけない。それで天道殿。お主に申し出たいことがある」 スッとスティールエッジが紙を取り出してきた。紙に注目すると、手紙であるらしいことに気づく。 いまどき紙の手紙も珍しいが、直接相手に渡すことにもエールには不可解である。 しかし、天道には意味は通じているようで、その手紙の意をつぶやいていた。 「果し状か」 「さよう。時間、場所の転送座標は手紙に記入しておいた。拙者と一対一、正々堂々と勝負していただきたい。 お主が勝てば我らの本拠地を明かし、モデル∨を引き渡そう。拙者が勝ったのなら、この地には手を出さないで欲しい。返答はいかに?」 「俺は逃げはしない。丁重に承ろう」 「かたじけない」 天道があっさりと引き受け、エールが目を見開いて視線を向ける。 プレリーもお茶を抱えたまま、ポカンとしていた。 「……勝手に決めたら……駄目……」 「このときのためにあらかじめ拙者のやり方はプロメテ殿と乃木殿の同意を得ている。 もとより拙者はなにか仕掛けを持ってはめるのは向いていないゆえ。理解して欲しい、パンドラ殿」 「確かに……プロメテは好きそう……」 パンドラの無表情な顔に、呆れが含まれたのはエールの気のせいだろうか。 エールも天道を咎めるように視線を向ける。もっとも、天道は相変わらず平然としているが。 「エール、プレリー。おばあちゃんがいっていた。たとえ敵でも礼を尽くしている相手は無下にしてはならない、とな。 特に相手が戦いを挑むというのなら、迎え討つのが男というものだ」 「聡明な祖母であったようだ。アナタのような方を育てたことを尊敬いたす」 「気にするな」 もはやエールに言葉はない。二人で話を進め、決闘は決定事項となったようだ。 「立会人にこちらは我が友、黒崎殿を指定したい」 「そうか、ならばこちらはエール。頼む」 「立会人ってなに?」 「居合わせてそれぞれ不正がないように見張るだけだ。今回は見物だけでよさそうだがな」 「買いかぶりでござる。……どうした? パンドラ殿」 くい、とスティールエッジの腕を引っ張っていたパンドラが、周囲の視線が集まるのを待っていた。 パンドラは無表情にルビーのような赤い瞳を周囲へ向けながらボソボソと提案を始める。 「その立会人……複数いてもいいなら……私もやる……」 「構わない」 スティールエッジが返事を戸惑っている間に、天道が了承をする。 エールはどうにもややこしくなってきた、と思い始めていた。 パンドラを相手にさらわれたモデルHたちの居場所を聞き出したいが、どうにも手出し無用の雰囲気だ。 エールはしかたなく、天道に任せることにした。 「この街はスティールエッジに守られている?」 「ああ、俺がお前たちと離れて調査をしたところ、あの街は一年前まではイレギュラーが発生していたらしい。 ガーディアンやセルパンカンパニーに助けを求めれないとき、街を救ったのはあのフォルスロイド、スティールエッジということだ」 「通りでモデル∨の反応はあったのに、事件は起きていなかったということですね。なるほど……」 ガーディアンベースへと戻る道筋ながら、天道はエールとプレリーにこの行動の意味を説いていた。 エールはフォルスロイドであるスティールエッジを信用しきれていないが当然だ。 たいがいが人格破綻者であるフォルスロイドを相手にした彼女が、スティールエッジを警戒するのも無理からぬこと。 天道も実際に顔をあわせるまでは街を守る“ふり”ではないかと疑っていた。 それは実際会って話をした今では杞憂だとわかったが。 「エール、あいつは信用できる。心から街を守る気でないと……今から俺を襲う子供のように住民に慕われない」 「食らえ! スティールオジさんに手を出させ……うわうわっ!」 「こういうふうにな。坊主、怪我はないか?」 天道を襲おうとして、つまずいて転んだカルロを丁寧に助けて天道が声をかけた。 後ろからは申し訳なさそうに妹が謝ってくる。 天道が様子を見ると、エールは疑うのが馬鹿らしくなっている顔になっていた。 スティールエッジは去っていった天道たちを見送った後、パンドラにお茶を出して一息つく。 パンドラはそういった仕草もスティールエッジは様になるものだ、とある種感心していた。 「……本当に真正面から……戦うの?」 「拙者はそれしかできぬ」 「“あの男”が作ったのに……アナタは本当、まっすぐ……」 「生まれはさほど重要ではござらん。大切なのは生きざま、と拙者は思う」 そういうところがフォルスロイドらしくない、とパンドラは感想を持った。 フォルスロイドはライブメタルを動力源とするため、性格が尖っていることが多い。 その中でこの穏やかで心優しいフォルスロイドは例外といってもいいものだろう。 「褒められるものでもござらん。結局のところ、拙者は不器用なのをごまかしているだけだ」 「あの子たちは……そう思っていない……」 パンドラはここにくる際、交流があった兄妹のことをツッコンだ。 魔女のお姉ちゃん、と呼び慕うカルロとアロエの兄妹は嫌いではない。 だからこそスティールエッジに問うべきことがある。 「でも……“あの男”の目的を知っている……?」 スティールエッジは「無論」と返答してさらに続ける。 その顔にはなにかを決意している様子が浮かんでいた。 「世界を破壊するのが“あの方”の目的なのは充分知っている。されど、パンドラ殿。拙者はこの世界が好きだ」 「……今やっていることは……アナタが後悔すること……」 「うむ、だからこそ拙者はこの身を懸けてやることがある。そのためには、天道殿という大きな壁を乗り越えるくらいでないと、拙者にやる資格はない」 それは反逆宣言に近い。でもパンドラはなにも言わない。 彼は世界を愛しているがゆえに、たとえ生みの親でも“あの男”を否定するだろう。 パンドラは違う。彼女は憎しみを持って、“あの男”を認めていなかった。 だからだろうか。目の前のフォルスロイドが少しだけ羨ましかった。 しばらくして天道がカルロ兄妹を連れて来た。 決闘の話を聞いて天道を不意討ちしたということだ。 笑い話。スティールエッジは天道に礼をいって、兄妹を家に送った。 パンドラが少しだけ兄妹の相手をしたが、スティールエッジはそのときの穏やかなパンドラの顔を知っていた。 □ 夜も深まり人気のない鉱山にて、足を踏み入れる影が一つあった。 雲が切れて月光が姿を照らすと、淡い光の中紫の装甲をまとったロックマンVAが街を見下ろしている。 幽霊鉱山、という俗称に相応しい不気味さを漂わせる場所で、黙したままロックマンVAは崖を降りていった。 「チッ、静かだな」 『俺がそうした。今見つかっては面倒だ』 ロックマンVAことペンテの不機嫌そうな声を受けながらも、モデルVAは相変わらず。 モデルVAによって監視機械の死角をついて潜入に成功したのだ。 戦いを避けるモデルVAにペンテは多少の不満を持っていたが、近いうちに天道たちと戦える機会があるのを知っている。 ここで騒ぎを起こせば天道たちと戦う機会を逃す可能性があるため、ペンテはモデルVAに従っていた。 「なんでこんな面倒な真似をしているんだ?」 『なに。最近俺を呼んでうるさい奴を黙らせに向かっているだけだ』 フン、とペンテは鼻を鳴らして曲がりくねった通路を歩く。 ロックマンの驚異的な身体能力がなければ、バランスを崩して転がり落ちていっただろう。 もっとも、ペンテの場合は素の場合も運動能力は高いため、あっさりと通り抜けそうだが。 通路の先を金網が塞いでいるが、ペンテは蹴って跳ね飛ばした。 「あれか、目的の奴は?」 『フン、始めてか? あれがモデル∨……すべてのライブメタルの元祖だ』 「図体がでかすぎる。生意気だ」 円環状の通路に、中央に三機の勾玉型の形の巨大な機械、ライブメタルモデル∨がそこに存在していた。 モデルVAは始めて目にしたモデル∨の感想が「生意気」のペンテに思わず吹く。 「それで、あれになんの用だ? モデルVA」 『なに……少しうるさくてな。黙らせる』 そういってモデルVAが宙に浮く。モデルVAの額が輝いて、光がモデル∨に吸い込まれていった。 モデルVAが細かく震える。同時にモデル∨から触手がペンテに巻き付いてきた。 ペンテは払おうと腕を上げるが、モデルVAが静止する。 『身を任せろ。直接乗り込む』 面倒な奴だ、とペンテがつぶやくのが耳に入るが、モデルVAは構わない。 一週間前から脳裏にうるさい声が響いてしょうがなかった。だから話をつけにいく。 強制的に付き合わされることになったペンテは呆れているが、モデルVAは見ていない。 割れたモデル∨の中央部に、ペンテはモデルVAとともに無音で入り込んだ。 モデル∨がしばらく瞬き、やがて収まる。いつもと変わらない静寂が訪れた。 □ 決闘の日は訪れた。 エールは指定の場所に天道と向かうと、すでに立会人として登場していたパンドラと黒崎を背後に、スティールエッジが佇んでいた。 天道が「ここでいい」とエールに告げて先に進む。エールは天道の背を見届けながら、ため息をついた。 相手であるスティールエッジは優しい性格だ。その相手に向かって天道がどこまで本気なのか、エールはつかみそこねている。 どうも今回は緊張感に欠ける。プレリーも来たがっていたのだが、天道が止めていた。 そんな必要もない、とエールは思ったのだが。 「わざわざ足を運んでもらって申し訳ない」 「気にするな。黒崎、俺たちの決着は……」 「わかっています。今は我が友、スティールエッジの番です」 そういって黒崎があっさりと引き、スティールエッジが立ち上がって前にでた。 スティールエッジは砂時計を取り出し、中央に置く。 数メートルほど後退したスティールエッジが、黒塗りの鞘に収まった日本刀を腰だめに構えた。 天道も両足を開き、ベルトへとカブトゼクターをセットする。 「さて、準備はいいな?」 「応」 カブトの問い掛けにスティールエッジが応え、カブトも鎧を脱いでライダーフォームへと変わる。 キャストオフで飛びかよう装甲は綺麗にスティールエッジやパンドラたちを避けていく。 カブトがクナイガンを頭上に持ち上げ、自然体の構えを保っていた。 同時にエールの肌が粟立った。二人のぶつける剣気が冷たい風となってエールの肌を撫でたのだ。 (さっきまで二人とも……仲がよさそうだったのに?) エールが疑問を抱いていると、砂時計の中の砂がすべて落ちる。 刹那の間、カブトとスティールエッジの地面が爆発しクレーターを作る。 ギィン、と盛大に刃と刃のぶつかり合う音が雷鳴のように轟いた。 殺気が爆発し、嵐となって決闘の場に吹き荒れる。必殺の一撃。互いに急所を狙う容赦無さ。 談笑していた姿を二人は根こそぎ削り取って、殺し合っていた。 エールはごくり、とツバを飲み込む。 (勘違いしていた) 緊張感に欠けることなどない。そして天道の忠告通り、プレリーを連れてこないで正解だ。 あまりにも天道が軽く引き受け、スティールエッジの人柄もあっていつもと違い凄惨な戦いにならないと思い込んでいたのだ。 それは間違いだと、二人が剣気をぶつけた今理解する。 天道もスティールエッジも、自分の命以上のものを懸けて戦っている。その戦いが凄惨にならないはずがない。 鍔迫り合いを繰り広げる二人の背中は、何倍も大きく見えた。 この戦いは今までのフォルスロイドたちとの戦いを上回ることになりかねない。 だから、エールや黒崎のような戦えるものを立会人に選んだのか、と気づく。 巻き込まれても自衛できる者のみ、この戦いを見届ける資格があったのだ。 ごくり、と緊張のままツバをもう一度飲み込む。命以上のやりとりを繰り広げる二人を前に、エールはただ目を逸らせずにいた。 To be continued……